打倒するには「開く」こと[2018年04月24日(Tue)]
◆陶山定人(すやまさだと)の「みぎわ」(1984年)。
藤沢市役所の旧「新庁舎」前に立つ。かつての本庁舎の後に出来たので「新庁舎」と呼ばれてきたが、本庁舎は最近全面的に建て替えられたので、旧「新庁舎」(閉鎖中)という言い方にならざるを得ない。
陶山定人(1926-2009)は広島県福山市生まれで相模原を拠点に活躍した彫刻家。
県内各所に作品があるようだ。
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窓を開いて 黒田三郎
先に帰ってユリの面倒みてね
きょうは
わたしが
デモにゆくわ
とも稼ぎの妻が言う
買い物と
つくろいものと
家族のエゴイズムのなかで
暮らして来た
妻が
亭主関白を押しのけて
出て行った彼女のことを
八時半になれば
寝床に入るユリに
どう話してやればよい
隊列と
歌声と
シュプレッヒコール
「キシオタオセ」の嵐のなかに
いま彼女はいる
窓を開いて
家族の内側に鎖ざされた窓を
ひろく外に開いて
父と娘とふたり
真暗な夜空に向う
*『もっと高く』(思潮社、1964年)に収録。
◆60年安保で岸政権退陣を求める市民のうねりが詩に刻まれている。
子守を言いつかった父親と、暮らしの澱を濯ぐようにデモに向かった妻と。
父と幼い娘は窓の外へと目を凝らす。
そこにわずかでも曙光を見出すにはその窓を外へと開かねばならない。
その行為をなぞるように、心もまた開かれていく。
◆詩集『もっと高く』には、「赤い鳥」が歌った「紙風船」の詩も入っている。
*ここでは『黒田三郎著作集1 全詩集』(思潮社、1989年)に拠った。