谷川俊太郎「知らずに会ってる」[2026年08月07日(Fri)]
知らずに会ってる 谷川俊太郎
僕の知らないことを知ってる人たち
僕にできないことができる人たち
僕が知らずに会ってるその人たち
その人たちがいっぱいいる
その人たちはどこにでもいる
知らないことがいっぱいで
できないことがいっぱいで
ほんの少し知ってることで生きている
ほんの少しのできることで何かしている
僕はもう九十歳でまだ三歳だ
僕の知ってるほんの少しは
生まれる前から知っていたこと
人間なら大昔から知っていたこと
本にはあまり載っていなくて
知らないうちに覚えていたこと
僕がいま知っていること それは
天は空とは違うということ
地球は海と地べたの星だということ
ヒトは群れると間違うということ
明日は嫌でも来るということ
『今日は昨日のつづき どこからか言葉が』(朝日新聞出版、2025年)より
※初出は2021年12月1日朝日新聞
◆「知る/知らない」「できない/できる」「いっぱい/少し」「もう/まだ」……
この詩について、こうして対をなすことばを頭の中や紙の上に並べていってみると、間違いないものとして語れる言葉は、ごく短い音の連なりでできていて、2音節、多くてもせいぜい4音節の言葉だということが分かる。車で言うと、「走る・曲がる・止まる」がちゃんとできることが大事で、それがしっかりしていない車は危険極まりないということになる。
(食べ物なんかもそうだったか?)
(昨日の広島におけるスピーチを聴きながら、ふと思ったこと。)



