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覚和歌子「知らない町」[2026年04月14日(Tue)]

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ドウダンツツジ

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知らない町   覚和歌子


あの角を曲がると
知らない町に着く
知らない子どもが住んでいて
知らない言葉を話してる
知らない花が香って
知らない歌が聞こえてる
知らないことがあるのはうれしい
明日が待ち遠しくて
たまらなくなるから
知らない町が あるのはうれしい
わたしが知らない誰かになれる


  ハルキ文庫『覚和歌子詩集』(2023年)より


***

◆かつて一度だけ行ったことのある西方の町に行く予定を組んでみている。
今時だから時刻表も地図も要るまい。乗り継ぐ駅も路線も未だ記憶にある……と思い、どのルートが最適か、と思ってスマホで経路を探索してみて驚いた。かつて乗換駅だった駅の名が見つからない。
地図を見当付けて拡大してみたら「新〇〇駅」という名前があった。ひょっとして……と思って調べてみたら、なんと、それがかつて乗り換えた駅だった。新しい路線が出来たためだ。

一つの駅名が消えるとは、一つの記憶が消えることに等しい。かつてその駅に降り立った人たちの記憶がきれいに消し去られる。

ひょっとして、そこから乗り換えて向かった先の町までが消えていやしないか、急に心細さがつのる。あるいは町は依然としてそこに存在するように見えたとしても、記憶がことごとく裏切られて行くのではないかーーそんな気さえする。

上の詩のように「知らない町が あるのはうれしい」とは言い切れない気分−−それは精神的に退行していることを意味するのだろうか?





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