伊藤桂一「微風」[2026年04月10日(Fri)]
キュウリグサ。まことに小さな薄青の花がはかなげだ。
少しの風にも揺れるので姿をとらえるのがむずかしい。
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微風 伊藤桂一
掌(て)にうける
早春の
陽ざしほどの生甲斐でも
ひとは生きられる
素朴な
微風のように
私は生きたいと願う
あなたを失う日がきたとしても
誰をうらみもすまい
微風となって渡ってゆける樹木の岸を
さよなら
さよなら
と こっそり泣いて行くだけだ
三木卓・編『詩の玉手箱』(いそっぷ社、2008年)より
◆ほんのひとすくいの水、葉の間からさしこむ日の光、草木の香をもたらすかすかな風−−そうした何でもないひとつひとつが実は何にも替えがたい幸せなのだと気づくのは、たいがいそれを失ってからだ。
とりわけ、それらを共にながめ、一緒の時間を生きた目の前の存在と己と−−どちらが先にさよならするのか、分かるはずもないのだが。



