イチョウ:小林妙子「散る日」[2025年11月19日(Wed)]
◆さすがに日中も寒い。イチョウは見頃を迎えた。
湘南台公園にて
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散る日 小林妙子
さっき
降りてきた同じ坂道を
今度は上がる
持ち重りする袋をさげて
途中 ちょうど中ほど
坂と同じだけ傾斜のついた
一本の大樹がある
立ち止まれない私は
ふり返る
四方へ枝を出したまま
引っ込めることのできなくなった
樹のかたち
見ているあいだに
散りきってしまいそうな
銀杏黄葉のはなやかさ
一瞬は速すぎず
一瞬は遅すぎない
散る とは
大地への告白
――かもしれないな
重たい袋は
一方の手に持ち替えよう
坂の上はクリニックで突きあたり
もっと秋ならばいいのに
冬になる
「詩と思想」編集委員会・編『詩と思想 詩人集2024』(土曜美術社出版販売、24年)より
◆伸ばした枝が、もう引っ込みの付かない樹、というのがおかしい。
それは見る者の愚直な生き方を思わせるようであり、坂道という最適とはいえない場所に根を生やした樹が、生き物を応援する姿のようでもある。



