見上司「はるかなる話」[2025年10月11日(Sat)]
はるかなる話 見上司
離島にも 離島がある
そんな離島にも
大きな大きな ガジュマルの樹のかげに
小さな小さな 学校があり
教室につくえが ならんでいる
こちらの三つは 二年生
あちらの一つは 一年生
四人のなかで一人が 女の子で
名前は「ゆう」
どんな字で書くかわからないが
九九がいちばんできる子だ
悠 優 裕 祐 勇 結 有 夕
こころで書いて
顔を思いうかべてみる
玄関に詩が書かれてある
「さおがまがる
かつおがそらで
とりになる」
ああ ここにも
いつの時代か知らないが
詩人がおられたのだ
胸を打つ
立派な仕事をされたのだ
たった三行
いや一行だっていい
どこかの小さな学校のかたすみで
小さな子どもたちに
口ずさまれる
詩が
書きたいな
たった一人だっていい
子どものこころに
海のように
空のように
未来のように
ひろがる
一篇の詩を
『虹のような日』(土曜美術社出版販売、2023年)より
◆詩集『虹のような日』では昨日の「ROUTE58」に続く詩。
離島を訪ねた折に立ち寄ってみた小学校でのことだろうか。
ならんでいるつくえに毎日座っているだろう子どもたちを想像してみている。
一人ひとりに思いをこらす、ゆったりとした時間が流れる。
帰りしな、玄関で一篇の詩*に出会う。
竿を握る漁師の太い腕、大きくしなる釣り糸……光を放つように高く跳ね上がるかつお。水しぶきが読む者にも降り注ぐようではないか。
空に躍るかつおの姿が、読む者を海や空へと解き放つ。
*若林良和・川上哲也 両氏による「宮古・池間島のカツオ産業文化誌(1)」★によれば、これは1989年の「平成元年度一茶まつり全国小中学生俳句大会」において、池間中学校の親泊裕之さんが特選を受賞した俳句であるとのこと。
★宮古島市総合博物館紀要23号(2019年)。宮古島市ホームページ
⇒https://www.city.miyakojima.lg.jp/soshiki/kyouiku/syougaigakusyu/hakubutsukan/files/kiyou2019wakabayashikawakami.pdf



