
八木幹夫「ほね」[2025年04月19日(Sat)]
いろいろこれから花開こうという草木も多いなか、もう身の始末をつけて後進にバトンタッチしようというたんぽぽ。
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ほね 八木幹夫
こじんまりした
演奏会にでかけていった
悲しいことが
あったばかりなので
きれいな
音に会いたかった
ひとの良さそうな
その肥ったフルーティストは
コーヒーブレイクで
こんなふうにいった
フルートという楽器の原型は 骨ではないか
という説があるのですよ 骨の髄を食べてい
る時 ふと 音がする おどろいて 息を 吹
き込む 澄んだ魂の声が 太古の闇にひびく
帰り道
灰になってしまった
きみを
しきりに
おもった
現代詩文庫『八木幹夫詩集』(思潮社、2005年)より
◆骨の髄を食べる太古の人類、その記憶を呼び覚ますような音楽。
もしそれが本当なら、われもまた、骨となった時に、魂となってせめてひとふしだけでも澄んだ声をひびかせたいではないか。