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ソホラーブ・セペフリー「住所」[2025年02月12日(Wed)]


住所   ソホラーブ・セペフリー
           (訳・鈴木珠里

「友だちのうちはどこ?」暁
(あかつき)の頃、馬に乗った男が問うた
空は静止し
旅人は口に銜
(くわ)えた光の枝を砂の暗闇に委ね
そして白楊
(ポプラ)の木を指差して言った

「あの木の手前
神の眠りよりも翠
(みどり)色をした小路がある
そこでは 愛が誠実の羽くらい蒼
(あお)
成熟の向こうから現れたその小路の終わりまで行き
そして孤独の花の方を向いて
花のところまで二歩のところ
地上の神話が永久に噴き出ているところに居てごらん
すると透明な畏
(おそ)れがお前を取り囲み
誠実に流れる空間の中で さらさらという音が聞こえるだろう
高い松の木にのぼって光の巣から
ひな鳥を捕まえている子供が居るから
その子に尋ねてごらん
友だちのうちはどこ、と」


 鈴木珠里ほか編『現代イラン詩集』(土曜美術社出版販売、2009年)所収。
 小池昌代『放課後に読む詩集』(理論社、2024年)に拠った。


◆ことばの結びつき方が、どこを取っても独得だ。かと言って奇抜なのでは全くなく、これ以外あり得いと思うほかない結びつきで印象的な輝きを放つことばたち。
――「光の枝」「誠実の羽」「成熟の向こう」「透明な畏れ」……どれも捉えがたいものたちが、具体的な姿・形を伴って立ち現れる。

うなってしまうのは「(孤独の)花のところまで二歩のところ」だ。
ここまではっきりと示されれば、何をおいてもそこに足を運ばずにはいられない。
それでいて、どこまで行ってもたどりつかない無限のかなたにあるような気もする。
それでも行こうと思う。「友だちのうちはどこ」と問うために。

※編者・小池昌代の注によれば、ソホラーブ・セペフリー(1928-1980)はイランの詩人。1960年には日本に彫刻を学ぶために来たこともあるそうだ。
また、イランの名匠アッバス・キアロスタミは、この詩に触発されて『友だちのうちはどこ?』という映画を撮ったとのこと。
観ておかねば。


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