佐野豊「こえのほし」[2024年12月05日(Thu)]
◆夕方の散歩、西の空に三日月と宵の明星が並んで見えた。
画像を縮小したせいか、上の写真では金星がほとんど見えないが、少しズームした下の写真ではどうにか並んで映っている。
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こえのほし 佐野豊
いまになって
そっと
やってくるものがある
しずかになってはじめて
きこえてくるげんじつがある
ふいに胸のあたりに
もりあがってくる じっかん
もう会うことの出来ない
たいせつなひとたちが
かわりがわりに
浮かんでくる
夜
ひとり部屋で
あおむけになって寝ていると
声の
プラネタリウムがはじまる
あれはどんな星座だろう
はじめて親友と呼べたきみや
おとうさん
かもしれない
いまになって
じわじわと ぼくのからだじゅうに
かけめぐるほし
薄明かりに似た
まなざしのような
こえのほし
詩集『夢にも思わなかった』(七月堂、2023年)より
◆夜、横になって目を閉じているとさまざまなものの形や誰彼の顔が次々と浮かんでくることがあるものだ。
この詩では、映像ではなく、「声の/プラネタリウムがはじまる」のだという。
声は五感の中でも直接に記憶につながっているそうだ。
(音楽など、一気に過去へと運んでゆくときがある。)
喪中の知らせにふれる機会が増える年の瀬、ほしたちのこえが自分にも届くだろうか。