ゼイナ・アッザーム「おなまえ かいて」[2024年10月18日(Fri)]
◆ガザでイスラエル軍の放った砲弾に無数の金属片が仕込まれて、多数の重篤な被害をもたらしているという報道があった。
★【2024年10月13日毎日新聞】
ガザで4000人の子供が手足切断 イスラエルが使った「特殊兵器」
⇒https://mainichi.jp/articles/20241012/k00/00m/030/113000c
むごい。
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おなまえ かいて ゼイナ・アッザーム
あしに おなまえかいて、ママ
くろいゆせいの マーカーペンで
ぬれてもにじまず
ねつでもとけない
インクでね
あしに おなまえかいて、ママ
ふといせんで はっきりね
ママおとくいの はなもじにして
そしたら ねるまえ
ママのじをみて おちつけるでしょ
あしに おなまえかいて、ママ
きょうだいたちの あしにもね
そしたらみんな いっしょでしょ
そしたらみんな あたしたち
ママのこだって わかってもらえる
あしに おなまえかいて、ママ
ママのあしにも
ママのとパパの おなまえかいて
そしたらもみんな あたしたち
かぞくだったって おもいだしてもらえる
あしに おなまえかいて、ママ
すうじはぜったい かかないで
うまれたひや じゅうしょなんて いい
あたしはばんごうになりたくない
あたし かずじゃない おなまえがあるの
あしに おなまえかいて、ママ
ばくだんが うちに おちてきて
たてものがくずれて からだじゅう ほねがくだけても
あたしたちのこと あしがしょうげんしてくれる
にげばなんて どこにもなかったって
ガザでは、自分や子どもが殺されても身元が分かるよう、この名前をその足に書くことにした親もいる。――2023年10月22日CNN報道
(原口昇平訳)
『現代詩手帖』2024年5月号〈特集 パレスチナ詩アンソロジー 抵抗の声を聞く〉(思潮社)より
ゼイナ・アッザーム Zeina Azzam は米国在住の詩人。ガザ地区の若者の執筆活動を奨励する非営利組織We Are Not Numbersのメンターを務めているという。
個人サイトは⇒https://zehinaazzam.com
(以上は訳者の原口昇平氏の解説に拠った)