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若尾儀武『戦禍の際で、パンを焼く』26[2024年05月14日(Tue)]

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エゴノキ。3年前にも同じ日にこの花の写真をアップしていた。
5月14日――我が家の記念日の一つ。

******


戦禍の際(きわ)で、パンを焼く  若尾儀武

26

窯の火がちろちろと燃えている
老婆は舟を漕ぎながら
思い出したように小枝を足している
そのたびに消えかかった火が火柱をあげる

(あぶないところだったね)

なあに 心配は無用
火加減のことならわたしに任せておいておくれ
なんたってわたしは釜の前にずっと座りつづけてきた
いつからだって?
そんなこと
忘れてしまったよ
そもそも火ってものはわたしが居ようが居まいが
窯に合わせて燃えるものさ
ちろちろからぼあぼあまで
必要以上の火柱は立てない
それでパンはいい按配に焼きあがる
それをバカモノ奴らが!

異星の火を欲しがって
パンは一瞬にして黒焦げる



若尾儀武『戦禍の際で、パンを焼く』(書肆 子午線、2023年)より


◆ここまでを読んでくると、詩集名の「パンを焼く」にこめられたものが分かってくる。

一切を焼き滅ぼす「戦火」に対して、人間のいのちや暮らしを支える「火」。
その火の力で「パン」を焼いて来た老婆にとって、その営みをどこまでも絶やさぬことが誇りである。「パン」を焼くのに必要なだけの火力で燃やす。いわゆる”第一の火”を暴れさせることなく燃やして「パン」を焼く。
火の御し方を心得て、生きる糧を生み出すことに彼女の尊厳はかかっている。そうしてその生き方を手放さないことが、彼女にとっての闘いだ。

◆一方で「バカモノ奴ら」は、平和の火に満足できない。
「異星の火」とは、第三の火=原子力をも飛び越えた「火」を四次元の世界から持ってこようとでもいうのか。
「パン」も「パンを食べる人間」をも一瞬にして黒焦げにするとは烏滸(おこ)の沙汰である。



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