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井手則雄「パレスチナへ」[2024年03月29日(Fri)]


パレスチナへ  井手則雄


太陽は衛星を
羊水に包んで
ゆるくぶらさがっている

砂漠の空は
黄色い硝煙に
霞んでいたが
道はまっすぐ刺さっていき
生誕は明日だ
もう引返せない

行手はパレスチナ
炎にただれ
どろどろと轟いて
道々に漂う死臭

不安な胎児が
ぼとりと砂に落ちるとき
ヨルダンの水は
其処を浸すか
ベイルートからも追われる
土地なき流離の民

武器を放すな 愛を離すな

ぼくは一枚の聖画
頑なに俯向いて
嬰児を抱くイコンを持っている
五〇年もここに掛かっていたろうか

そっと外すと
白い余白が
くっきり浮かぶ

イスラエルの馬鹿
生れるキリストは
また殺される


木島始・編『列島詩人集』(土曜美術社出版販売、1997年)に拠った。

井手則雄(1916-1986)は詩人・彫刻家。
詩誌『列島』には創刊号から関わり、詩、評論等を発表した。
彫刻では鉄を用いた作品が多い。

小西忠彦氏のブログ「鉄の詩」によれば、「パレスチナへ」は、1982年、ベイルートのパレスチナ難民キャンプにおいて、レバノンに侵攻したイスラエル軍が包囲する中、レバノン右派民兵がパレスチナ人を大量虐殺したサブラ・シャティーラ事件をふまえる。「ベイルートからも追われる」とはそのことを指す。
井手の第四詩集『白の夏』(詩学社、1983年)所載の詩。

小西忠彦ブログ〈鉄の詩〉「パレスチナへ」
http://ironpoem.seesaa.net/article/288531010.html

◆「武器を放すな 愛を離すな」は、「武器を抜き放つな 愛を身から離すな」の意味であろう。
「はなす」の漢字の使い分けに留意する必要がある。決して武力容認ではない。

◆嬰児が死ぬためにこの地上に生まれ落ちる、などということが、どうしてあり得るのか?





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