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若松英輔「言葉を生きる」[2024年02月03日(Sat)]

若松英輔最新詩集『ことばのきせき』から、もう一篇――


言葉を生きる   若松英輔


一つの小さな
詩をつむぎ
目に見えぬ
言葉の護符を
身に宿せ

誰も近くにおらず
ひとり ひざを抱えて
うめくときも 言葉は
いつも
ともにいる

言葉は
おまえが
どこにいても
寄り添いつづける

言葉とつながれ
避けがたき
苦難と悲痛から
おのれと
愛する者たちを守るためにも

ペンをとり 真実の
言葉を書き記せ
そのとき人は
文字によって 世に
ひとつの炎を送る

道に迷ったら
言葉をたのめ
お前の流す涙が
動かなかった記号に
いのちを吹き込むだろう


◆かねて、人生訓めいた詩は苦手で、紹介することは避けていることが多い。
この詩はどうか?
つぎのように命令の形を帯びた詩句が目の前に現れる――

〈言葉の護符を/身に宿せ〉
〈言葉とつながれ〉
〈真実の/言葉を書き記せ〉
〈言葉をたのめ〉

読み味わうほどに明らかだが、これらは、人を促すためではなく、自らの裡に吹き込み。我が身を響動(とよ)もすために銘肌(めいき)された言葉だ。
気休めや、便利な符牒でも空疎な呼号でもない言葉、真実の意と、たましいから沸き出る情と真性の知をこめた言葉――それが身の裡に響かない限り、どうして人とつながることができよう。

少なくとも我が身に沿うた言葉を手探りで求め続けるならば、どんなに小さなつぶやきや囁きであっても、ひとつの炎となって暗夜の地上を照らし、凍えた我と人を暖めるいのちの言葉となるはずだ。


若松英輔「ことばのきせき」表紙.JPG.jpg

若松英輔『ことばのきせき』(亜紀書房、2024年)
装丁:名久井直子

*表紙を一目見たウチの娘いわく、「完璧だね!」。
全く同感である。




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