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永瀬清子「美しい国」[2023年12月20日(Wed)]

◆岩波文庫に『永瀬清子詩集』が加わった。
同じく岩波の、カタイことで知られる月刊誌『世界』も女性の編集長に代ったそうで、執筆陣・内容ともに面目を一新した。
時代の潮流を生み出し、大きな変革をもたらすには女性がふさわしい時代に入ったと言えそうだ。

◆永瀬の詩『美しい国』は、敗戦後間もなく出した同題の詩集(1948年)を代表する一篇。

似たような題名の新書で国民を欺いたあげく、膨大な負の遺産を積み残して世を去った元首相とは、むろん全く対照的に、希望を語ってしかも真実味にあふれている。

ガザやイスラエル、ウクライナやロシアの人々が、この詩を仲立ちに、平和な星空を眺められる日を一刻も早く、と願う。


***


美しい国   永瀬清子


はばかることなくよい思念
(おもい)
私らは語ってよいのですって。
美しいものを美しいと
私らはほめてよいのですって。
失ったものへの悲しみを
心のままに涙ながしてよいのですって。

  敵とよぶものはなくなりました。
  醜
(しゅう)とよんだものも友でした。
  私らは語りましょう語りましょう手をとりあって
  そしてよい事で心をみたしましょう。

ああ長い長い凍えでした。
涙も外へは出ませんでした。
心をだんだん暖めましょう。
夕ぐれて星が一つずつみつかるように
感謝と云う言葉さえ
今やっとみつけました

  私をすなおにするために
  あなたのやさしいほほえみが要
(い)
  あなたのためには私のが、

ああ夜ふけて空がだんだんにぎやかになるように
瞳はしずかにかがやきあいましょう
よい想いで空をみたしましょう。
心のうちにきらめく星空をもちましょう。


谷川俊太郎『永瀬清子詩集』(岩波文庫、2023年10月)より。

***

澤田知可子がこの「美しい国」を歌っている(作曲:小野澤篤)。
どこまでも澄んだ、ことばを慈しむように届けてくれる歌声だ。

【澤田知可子オフィシャルサイト】
https://www.youtube.com/watch?v=8gcjYRHAI2c



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