• もっと見る
« あるべきもの何もかも「ない」 | Main | 鷹取美保子「わたしの いとしい もの」 »
<< 2024年02月 >>
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29    
最新記事
カテゴリアーカイブ
月別アーカイブ
日別アーカイブ
鷹取美保子「風のなかのきりん」[2023年12月05日(Tue)]

◆違う空気を吸いたい、と思って手にした骨考(ほねこう)という詩集、詩集の中盤・U部には「骨考」と題する十篇の、姉や父、さらには自分の死をめぐる詩群が並ぶ。

その先、V部で出会った、顔を上げ、前方に視線を向けたくなった詩を――

***


風のなかのきりん  鷹取美保子


長い首を
空に向かって
さらに伸ばそうとしている
瞳は
生まれたての
聖者のように
優しい。
風の道をさがして
平原の遠くを
高い樹の
向こうを見ている。
ゆっくりと
回す首を
光が包む。
風が運ぶ
紡がれた言葉や
見知らぬ地の便りを
待ちわび
耳をふるわせ
喜びの耳
で待つ。
キリンの首が
また少しのびて
赤土の地に夜が来る
眠らない目は
月も流星も追わず
ただ風を願っている。
立ち続ける
細い脚に朝が来て
小さくあくびをする。
新しい一日も
もう一つの
新しい一日も
正しい風のなかに
まっすぐに
立つ日を夢見る。
終の日には
きりんは
首を大樹の太い枝に
休ませ
風の声にこたえ
密かに声をあげるだろうか。


鷹取美保子詩集『骨考』(土曜美術社出版販売、2022年)より


◆この詩も〈死〉が主題ではある。
だがことばはやわらかく低めの声でつむがれて、不思議に明るい。そうして澄んでいる。

優しい瞳で遠くをみつめ、「正しい風のなかに/まっすぐに/立つ日を夢見る」きりんが、やがて迎える「終の日」の姿に、命あるものは、かくありたい、という願いがこめられているからだろう。



この記事のURL
https://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/2882
トラックバック
※トラックバックの受付は終了しました
 
コメントする
コメント
検索
検索語句
最新コメント
タグクラウド
プロフィール

岡本清弘さんの画像
https://blog.canpan.info/poepoesongs/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/poepoesongs/index2_0.xml