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平安名秋「今、平和は問いかける」[2023年06月23日(Fri)]

◆6月23日、沖縄慰霊の日だ。
戦没者追悼式で高校3年生が朗読した詩を。



今、平和は問いかける  平安名秋(へいあんな あき)


夏六月
溶けかけたアイスを手に走り出す
緑萌ゆるこの島の昼下がり
礎に刻まれた「兄」に
まるであの日のように
そっと触れるおばぁの涙は
陽炎(かげろう)が登る摩文仁の丘に
ただ果てしなく広がっていく
その涙は体を包み込み
私を「あの日」へといざなう
限りないこの空は
何を覚えているのだろう
涙に満ちたおばぁの瞳は
何を語りかけているのだろう
七十八年前の
あの日
あの時
かけがえのない
たったひとつの命が
憎しみと悲しみの中で
散っていった
名も無き赤子の
(かす)かな
微かな泣き声は
震える母の手によって
冷たく光の無いガマの中で
(はかな)く消えていった
幾多もの砲弾が
紺碧(こんぺき)の海を黒く染める鉄の嵐となって
この島に降り注いだ
戦争が起きる前
そこには日常があった
私達と同じように
原っぱを駆け回り
友達とおしゃべりをする
みんなで暖かいご飯を食べ
時には泣き
時には笑い
時には「ありがとう」を伝える
そんな今と変わらない日常が
平和が
そこにはあった
平和は不確かで
(もろ)く崩れやすい
いつもすぐそばにあるのに
いつのまにか消えていく
おばぁの涙は
摩文仁の丘に永遠(とわ)に灯(とも)る平和の火は
今、私達に問いかける
平和とは何かを
私達に出来ることは何かを
私は過去から学び
そして未来へと語り継いでいきたい
おばぁの涙を
沖縄の想いを
かけがえのない人達を
決して失いたくはないから
今日も時は過ぎていく
いつもと変わらずに
先人達が紡いできた平和を
次は私達が紡いでいこう
そして世界に届けていきたい
平和を創り
守っていく
この沖縄の「チムグクル」を


◆心に刻み込みたい若者の決意のことばだ。

いくつか動画でも紹介されている中から、NHKニュースを―ー
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230623/k10014107521000.html


◆TVのニュース番組では現地からの中継映像に東京キー局スタジオのキャスターがコメントする形が多かったが、それらの中で、この詩の朗読について「子どもなりに平和に寄せる思いを……」というコメントがあったのには、首をかしげざるを得なかった。

「子どもなりに」という言い方が大人目線であることがふさわしくないと思う。
作者が18歳だから不適当と言うのではない。仮に朗読者が小学生であっても、「子どもなりに」と受けるのは、人として恥ずかしいだろうと思うのである。

《へいわを創り/守っていく》と誓う真っすぐな決意に、大人・子どもの別などあろうはずがない。
朗読にじっくり耳を傾け、「チムグクル」に応えたいと念じて生放送に臨んだならば、「大人なり」のさかしらな口が出る幕はなかったろうに、と思う。


この記事のURL
https://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/2717
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