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小島力「川」[2023年02月21日(Tue)]

◆昼前、いつもの病院に向かうべく車を走らせて信号で停めたら、信号わきにある大きなマンションの前に報道クルーが何組か目に入った。

昨夜、当市と横浜市との境付近の歩道で事件があったのは知っていた。

車の窓を開けて、カメラマンの一人に声をかけたが、未だ詳しいことは分かっていない様子。現場は坂を下りた直ぐ下だと言われて、ネットで見た現場の写真と通りかかった辺りの風景とが頭の中で一致した。
取材陣がたむろしているマンションの下、国道1号線沿いの歩道が現場だったのだ。隣の一戸建てからはNHK記者も出て来た。聞き込みをしていたのだろう。

夕方のニュースで、襲われた年配男性は不幸にして亡くなったと知る。奥様と二人暮らしの藤沢市民であった。

◆物騒な事件が続く。ましてや往き来することの多い、生活圏内での事件だ。早期の解決を願う。

◆午後、施錠をしっかり確認してから短い外出をした。
空き缶類を拾いながら相棒と歩いた散歩ルートの一つを、自転車で回って見たのである。

しばらく通る機会のなかった畑の側溝にペットボトルや空き缶が目立つ。
食を支える圃場にポイ捨てゴミが散乱しているとやはり気分は沈む。

◆不穏な事件は、仕事や人間関係で思うに任せぬ現代人の不安や苛立ちを反映している。
買い物に寄った店での客と店員さん、通りを行きかう車やバイクのやりとり、むろんSNSなど電網の上でも、プツプツがフツフツ、さらにブツブツと膨れてきて、イライラのあぶくが、はじける手前まで大きくなっているのを感じないわけにはいかない。

◆本日回収のペットボトル+空き缶+ビンは合計65本。
水洗いして、少しだけサッパリした。

◆もうひとつ気分転換に「川」という詩を――

***


川  小島力


豊かな水が川幅一杯にあふれ
満々として流れくだる姿はいい
水源の湖から押されるように流れ出し
四方の谷間や丘陵から仲間を呼び集め
下流の広大な湿原で
光りながら蛇行するのはもっといい

釧路川 千歳川
雨龍川 幌内川 長流川(おさるがわ)
いくたびか訪れた北の大地には
そんな川がまだ残されていた
なだらかに広がる原生林の中を
時には笑いさざめきながら
ゆったりと曲がりくねる
ペンペケタン ヤンペタップ
サロベツ オンネベツ
原住の人々が長い歴史をかけて
あがめ慈しんだ神々の土地
敬虔な祖先の歌が
木霊のように林間にはねかえり
心にひびいてくる

長いこと身のまわりで
岩石だけが累々と横たわる
川の残骸ばかりを見てきた
それはダムや堤防に脈拍をはばまれた
動脈硬化の老いた血管だ
草や 木や
そして地の底からさえも
ふるさとや 歴史や
そして人々の心からさえも
およそみずみずしいものすべてを
しぼり尽くし涸らしつくす
この国のゆがんだ骨格
水の途絶えた河川の骸ろに
こだまする歌はもうない

ゆったりと満ちあふれ
岸辺の草を浸して流れる川はいい
後からあとから折り重なり
お祭りのように押し合いへし合い
駆け足で流れくだる川はいい
ぶ厚い雪田の裾から
宝石のようにきらめいてほとばしり
神々の歌を奏でながら
永遠に流れ続けるのだったらもっといい



小島力『わが涙滂々 原発にふるさとを追われて』(西田書店、2013年)より




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