
若松英輔『愛について』より「定義T」[2023年01月29日(Sun)]
◆若松英輔の四冊目の詩集『愛について』、巻頭は「定義T」と題する次の短い詩篇である。
定義T 若松英輔
愛とは
何かなど
改めて
考えずに
生きるなか
静かに育まれる
熾盛(しじょう)な
悦び
◆「熾盛」とは「火が燃えあがるように盛んなこと」だと広辞苑にある。
「熾」は「熾烈(しれつ)」という熟語の場合と同じく、火の勢いの盛んなさまを表す。
その前に「静かに/育まれる」という形容が付されている。
「めらめら」でも「ぼうぼう」でもない、はた目には気づかれないかもしれないほどの、しかし決して消えることなどなく、むしろ日に日に勢いを増してゆく火。
そのように、観念でなしに体感されている「愛」。
「熾盛」は同音の「至上」という言葉と響き合ってもいるようだ。