
『開高健の茅ケ崎』[2023年01月09日(Mon)]
◆7日、『開高健の茅ケ崎』と題する催しが茅ケ崎市民会館であった(日本ペンクラブ主催)。

◆開高健が亡くなった直後に、ラチエン通りの自宅前をたまたま通ったことがある。通りからは距離がある入口のあたりを、あわただしく人が出入りしていたことを思い出す。
その後、自宅は記念館として公開されているが、未だ訪れたことはない。
学生時代、授業で小説のモデルについてさる教授が触れたことがあって間もなく手にした『夏の闇』も、本棚の奥に眠ったままであった。
今は軽々と越境する表現者たちが数多くいるけれど、あの世代(開高健は1930年生まれ)の人々が骨がらみで格闘し、しばしば呪詛さえしていた〈日本という国〉の重苦しい影、圧迫が息苦しいほどに塗りこめられている。
◆電子版全集を編んだ滝田誠一郎氏によれば、茅ケ崎について書いた開高健の文章は一つ、という。
藤沢の西武デパートにあった書店リブロのために寄せた一文だそうで、シンポジウム司会のドリアン助川氏が朗読してくれた。
開高健が茅ケ崎に引っ越して四年経った頃のものだというが、「終の棲家」となる予感が広がって全身を解きほぐしてゆくさまが文章から静かに立ち昇るような文章であった。
社会人としてのスタートが茅ケ崎であった者の一人として、ぜひその文章を茅ケ崎市民及びゆかりのある方たちに広めて頂ければ、とアンケートに希望を書いて会場をあとにした。
帰り際、茅ケ崎市民会館から駅に向かう歩廊からの夕景。