
若松英輔「なぐさめの真珠」[2022年11月29日(Tue)]
なぐさめの真珠 若松英輔
苦しみも 悲しみも
手放してはならない
人生という 貝殻が
なぐさめの真珠を
宿すまで
詩集『たましいの世話』(亜紀書房、2021年)より
◆苦しみや悲しみは早く手放してしまいたいと思うのが人の常だろうに、この詩では、手放すなと言う。
それらを核として「真珠」が宿るのだという。
それは誰かの襟元を飾るだろう。
とすれば、四苦もそれらがもたらす悲しみも、他の誰かの幸いにつながるものとなりうる。
それは自分を犠牲にするということでない。
自分の人生に宿った真珠は他の誰かを輝かさずにいない。
つまり、自分のためだけの人生などありはしない、ということになろうか。