
エーヴェルラン「ヨーロッパのどこかで」[2022年09月30日(Fri)]
◆ロシアによるウクライナ4州併合を一方的に宣言。
予備役への招集からロシア国外に逃れる人々が20万人という。
国家としては瓦解が始まっていると言えるのではないか。
TVに映った併合セレモニーに臨む人々の視線は揺れて見えた。体裁を取り繕うだけの茶番がいつまで通用するか、不安な表情に見えた。カメラは雄弁だ。
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ヨーロッパのどこかで エーヴェルラン
道もなく、白雪におおわれた
死者の国が横たわる
十字架が立っているのが
いたるところに見受けられる
ここでは、これが林だ
これが平和だ
前には緑の木々があったが
かわりにこのような林を貰った
凍った塹壕にそって
不思議な藪が生い茂り
夜になると
狼がうろついて、臭いをかぐ
からみあった、錆びた鉄条網に
さらに近寄って見れば
くさってぼろぼろになった
服の残りがひっかかっている
君が家にいたころの
居間はどこか知りたいか?
ながく歩く必要はない
多分この辺りだろうよ
(林穣二 訳)
篠田一士監修『ポケット 世界の名詩』(新装版。平凡社、1996年)より
◆エーヴェルラン(1889-1968)はノルウェーの詩人。
第2次世界大戦ではドイツ軍の侵攻に対して徹底抗戦を唱え,詩によって人々を鼓舞したが、捕えられて終戦まで収容所で過ごしたという(ブリタニカ国際大百科事典による)。