
畑島喜久生「おしえてください」[2022年09月20日(Tue)]
◆おりから列島は台風14号に見舞われている。見えないものに注意を払いながら過ごす夜に――
***
おしえてください 畑島喜久生(はたじまきくお)
かぜは みえないのに どうして
かぜって よぶんですか
そよそよ
ぴゅうぴゅう
ぴゅうぴゅうって
おとでしょ
おとのことでしょ
でも
ちっとも
そよそよって
みみには
きこえて きません
なのに
おとでも
それと
みえてもいないのに
どうしても
みんなとおなじ
かぜって なまえにしたんですか
おしえてください
現代こども詩文庫3『畑島喜久生詩集』(四季の森社、2022年)より
◆こどもの詩について、実作と理論の両面で貢献して来た詩人。
◆見えもせず、聞こえもしないものを受けとめるに必要な想像力。大人はそれをさびつかせてしまうだけじゃなくて、それを駆使することを怖れてさえいるのかも知れない。
この詩のように真っ直ぐ問われると、たじろぐしかない。大人は、おそろしくわずかなことしか知らないのに、何でも知っているフリをしているのだし、実は、そのことをすでに見抜かれているのだ。