
金丸桝一「火種」[2022年09月17日(Sat)]
火種 金丸桝一
火種はあるか
ひとの世のまやかしを問い
ひとの世のまやかしを拒む
火種はあるか
なお 怒ることのできる
なお はげしく怒ることのできる
火種はあるか
かなしさをわかちあうことのできる
なお 一日を生きよと励ましあうことのできる
火種はあるか
そういう火種は
まだあるか
この世に
生きて
いて
日本現代詩文庫『金丸桝一詩集』(土曜美術社出版販売、2000年)より
◆ゆりかごから墓場までことごとく「私(わたくし)する」者ばかり。そうした世に在って、わが身を燠(おき)にして火種を持し続けること。
不正義のありかを照らしだし、こごえた頰に再び血の気を通わせて空を仰ぐことを可能にするような。