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高細玄一「サマショール 人類の運命」[2022年09月13日(Tue)]

◆ロシアによるウクライナ侵攻当初から懸念されて来た原発の安全確保、綱渡りが続く。

地球規模の核汚染と同居していることを身を以て味わってきたこの国で、チェルノブイリ(チョルノービリ)とそこに住み続けている人間に思いをはせて来た詩人の近作を――

***


サマショール  人類の運命
              高細玄一


     
サマショール ぼくのばあや
故郷で死にたいとばあや でもね
サマショール あそこは人が住めない放射線なんだ
ウクライナのチェルノブイリ(チョルノービリ)
福島の浪江町 双葉町 大熊町 富岡町 飯舘村 葛尾村
自分で動きまわるんだね 帰りたいから
わがままな人 サマショール
自分で野菜をつくる ジャムをつくる 最期は故郷で
薪ストーブ 森のキノコ
ここには溢れる自然があるのに
人には誰も手だしが出来なくなった
でもサマショール 高線量の下 この土地をこの運命を
それはもしかすると
人類そのものの運命 それを見守る
サマショール きっとここで誰にもみとられず
忘れられて最期をむかえ
死さえも雪に埋まりそのまま消えて行くんだろう
サマショール 福島のとんでもなく汚染された土にも
春が来て雪の下からフキノトウが一つ一つ芽をだす
カモシカが雪を足で掘る

サマショール まさかこの汚染された土地 凍った大地に
キャタピラとドドドドドドと地鳴りでやってくるとは
ばあやの住処の小屋を踏み潰して
ドドドドドド 汚染された土地はもう一度荒らされ
大量の人人人人人
この汚染された土地の上を ドドドドドド
ロシアの若者たちはなにも知らない
知らされていない
重装備に身を固め進んで行くドドドドド

こんなことがこの世で起こるなんて
サマショール いまどうしてる
どうなっている?
静かに大地の最期の番人として見送るはずだったのに
人類の運命はどうなるんだろう
サマショール


「自主帰還者」の意。一般的には、チェルノブイリ(チョルノービリ)原子力発電事故で立入禁止になった区域に、自らの意志で住む人々を指す。


高細玄一(たかほそげんいち)詩集
『声をあげずに泣く人よ』(コールサック社、2022年7月)より


 
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