
クリスティーナ・ロセッテイ「登り坂」[2022年09月09日(Fri)]
登り坂 クリスティーナ・ロセッティ
羽矢謙一・訳
道はずっと曲りくねった登り坂なのでしょうか
そうだよどこまでも
一日の旅は一日じゅうかかるのでしょうか
朝から晩までだよ
でも夜には安息の場所があるのでしょうか
歩みの遅い暗い時間が始まるとき 泊まる宿がある
暗やみがわたしの目からそれを隠しはしないでしょうか
おまえがそのいこいの宿を見失うようなことはない
わたしは夜ほかの旅びとに会うでしょうか
先に行っている人たちに会う
では近くに来たら戸をたたくか呼ぶかしなければなりませんか
その戸口で待たされることはない
足をいため くたびれているとき わたしに慰めがあるでしょうか
骨折りへの報いがある
わたしのために また求める人みんなのために寝床があるでしょうか
もちろん 来る人すべてに寝床がある
篠田一士・監修『ポケット 世界の名詩』(新装版。平凡社、1996年)より
★クリスティーナ・ロセッティ(Christina Georginna Rossetti 1830-94)は、ダンテ・ガブリエル・ロセッティ(1828-1882)の妹。兄をはじめとするラファエル前派の画家たちのモデルもつとめた。
◆生の行路への不安から問わずにはいられない。
道は曲がりくねって見通すこと難しく、しかも登り坂だ。
心配せずとも良い、と落ち着いた声が魂に直接語りかけてくるからだ。
一つの安心が与えられても、やがてまた訊ねずにいられない。
身を休める所にたどり着けるかどうか、しんどい思いをしているのは自分だけではないのか……
だが、引き返すことはしない。立ち尽くしてしまうこともない。
なぜ? と質問されたら、語りかけてくる者を信じているから、問えば答えが返ってくるから、と言うしかないのだけれど。