
コルベ神父のこと その2[2016年01月15日(Fri)]
コルベ神父に生かされた戦後の半世紀
◆コルベ神父が身代わりとなったことで生き延びる機会を得たフランチシェク・ガヨヴィニチェクだったが、解放後家族のもとに帰った氏を待っていたのは息子二人の戦死というむごい事実だった。
父親と同じアルミア・クラヨバ(A・K)という義勇軍の兵士として祖国のために戦ったのだった。
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ガヨヴィニチェク氏(→の人)と夫人、二人の息子たち
(長崎・聖コルベ記念館の展示。以下の写真も同じ。)
ポーランドという国の過酷な歴史を思う。
◆ポーランドは昨年の新政権発足でシリア難民受け入れに否定的な方針を打ち出した。
大国の支配を受け翻弄された歴史がそうさせるのかも知れないが、傷みを知るからこそ手をさしのべる道を模索してほしいと願う。
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◆シリア政府軍に包囲された、首都ダマスカス郊外の町マダヤの人びとを襲う飢餓と寒さが報じられている。
頬がこけ、栄養失調でおなかがふくらんだ子供たちの姿、食べられるか定かでない雑草を鍋で煮る様子には言葉を失う。
前回記事のM・コシチェルニャック「鉄条網の向こう側の子どもたち」と全く同じ事態が厳寒の今、彼らを襲っているのだ。
★Avaaz.orgという所から下記のキャンペーンへの署名がメールで届いた。
ぜひご協力を。
国連事務総長:マダヤの住民を飢えから救ってください
→https://secure.avaaz.org/jp/madaya_starvation_siege_loc_rb_jp/?bdFKShb&v=71410&cl=9268354976
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◆コルベ神父は1971年に福者に列せられ、1982年には聖人の位に列せられることになる。
バチカンで行われたその式典にガヨヴィニチェク氏も招かれた。
◆コルベ記念館館長の小崎登明氏は彼のもとを3度訪れ、コルベ神父の最後の日々を直接伺っている。
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最初の訪問時(1983年)
新たな人生を与えられたガヨヴィニチェク氏は、自らの体験とコルベ神父の愛を語り続ける戦後の半世紀を生きた。享年93歳。
☆Franciszek Gajowniczek (November 15, 1901〜March 13, 1995)
英語版Wikipediaによる
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90歳の時のガヨヴィニチェク氏とコルベ神父の肖像
もう一人の語り部
◆小崎登明氏の著『身代わりの愛』はその生涯を可能な限り直接証言に拠って記した貴重な一冊。
彼自身が学んだ長崎の聖母の騎士修道院や、やはりコルベ神父が創設したポーランドのニエポカラヌフ修道院で、直接に神父を知る人びとの証言を丹念に聴き取り記録してきた。
各種の伝記にある記述の違いにも検討を加え、コルベ神父の実像に迫っている。

(聖母の騎士社、1994年)
◆『長崎の鐘』の永井隆博士(1908〜1951)が長崎時代のコルベ神父を診察したことも、この本に記してある(92p)。
小崎氏にとって永井博士は小神学校(聖母の騎士中学)での生物の先生でもあった。
なお、1928年生まれの小崎氏もまた長崎・浦上で原爆に遭った方だ。
聖母の騎士修道院(コンベンツアル聖フランシスコ修道会)に入ったのはその2ヶ月後である。
こうした体験から来るのだろう、証言者に可能な限り肉迫して真実を知ろうとする姿勢と、それを多くの人に伝えないではやまない情熱は現在もやむことがない。
★小崎登明氏のブログがある。まめに記事も更新され、お元気だ。
→http://tomaozaki.blogspot.jp/
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◆昨年11月30日の記事で少し触れた長崎・聖コルベ記念館にあるコルベ神父の机や椅子は、ともに布教したゼノ神父*が手ずから作ったものだそうだ。
全く同じ作りの部屋と机がニエポカラヌフ修道院にもある、ということも小崎氏の『身代わりの愛』で知った。
*ゼノ・ゼブロフスキー(1891~1982)…コルベ神父とともに来日した人。コルベ神父が離日した後も日本で布教を続けたが長崎で被爆。
しかし戦後、浅草などで戦災孤児や恵まれない人々のために献身的に活動し、「アリの街の神父さん」として知られる。「ゼノ、死ぬヒマない」が口癖だったという。

長崎・聖コルベ記念館に保存されているコルベ神父の部屋

コルベ神父がここに坐っていたと思うと不思議な感覚に誘われる。
*写真はいずれも2005年に撮影
★関連記事:11月30日〈貸本『墓場鬼太郎』と水木サンの机〉
→https://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/222
◆聖コルベ記念館の公式サイトは
→http://kolbe-museum.com/?mode=f2
『身代わりの愛』ほか関連本を多く出している聖母の騎士社HPは
→http://www.seibonokishi-sha.or.jp/jml/kolbe