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リッツォス「一覧表」[2022年08月17日(Wed)]


一覧表   リッツォス
           中井久夫・訳


夜には、別の壁が壁のまた後ろにあるのを本能が教えるのだろうか。鹿も
泉の水を飲みにやってこようとせず、森に残る。
月が出ると、第一の壁が砕ける。次いで、第二、第三の壁も。
野兎が降りてくる。谷で草をはむ。
あらゆるものが、そのままのかたちとなり、やわらかで、輪郭がぼんやりとして、銀色だ。
月光のもとの雄牛の角も、屋根の上のフクロウも、
河をあてどなく流れ下る、封印をしたままの梱包も――。


中井久夫・訳『リッツォス詩選集』(作品社、2014年)より



◆不思議な世界だ。
舞台の書き割りが転換するようにして、順次違う場面が出現する。
冷たい月の光を浴びて闇の中に浮かび上がるもののボウッとした輪郭。
絵に描かれたモチーフのように登場する雄牛の角やフクロウ。
動きのあるものも、ないものも姿を見せるが、やがて「河」とそこを流れ下る「梱包」に出会う。

「河」は時間をはらんで流れる。人間の内に流れる意識の表象でもあるようだ。とすれば、この詩は、いきなりある人間の内面世界からスタートし、そこにあるものたちと出会ってゆく旅だったことになる。

鹿や野兎、雄牛の角、フクロウはそれぞれ象徴するものがあるのだろうが、読み解くのは後で良い。(タイトルの「一覧表」も、まずは全体を眺めわたしてから、という含意だろう。)

旅を進めるうちに見えてきたのが「封印をしたままの梱包」――封印したのは荷物の持ち主の意識もしくは無意識だ。
流れ下る状態のままで、中に在るものたちに目を凝らそうとする訳者の、精神科医としてのまなざしを感じる。




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