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リッツォス「歩み去る」[2022年08月15日(Mon)]


歩み去る  リッツォス
           中井久夫・訳


彼は道の突き当たりで消えた。
月はすでに高かった。
樹々の間で鳥の声が布を裂いた。
ありふれた、単純なはなし。
誰一人気を留めぬ。
街灯二本の間の路上に
大きな血溜まり。



中井久夫・訳『リッツォス詩選集』(作品社、2014年)より

◆惨劇の瞬間の目撃者は月と鳥のみ。反応したのは鳥だけだ。一つの命が失われたというのに、それは「ありふれた、単純なはなし。」と事も無げに語られる。

戦地と限らない。人が行き交うスクランブル交差点だって、実は同じで、目の前で起きた事件さえ、目に入らない。もしくは目に入らない鈍感さを身につけることで、他人にぶつかることなく道を渡れる。

一つの死を物語る血溜まりは確かにあるのだが、それは街灯と街灯の間の闇の底に広がっていて、目と耳以外の感覚、すなわち鼻で嗅ぎつけるか手指でぬめりに直接触れるかしない限り、気づくことがない。

いや、仮に気づいても、気づいた上で「歩み去る」ことだってできなくはない。
どうします?歩み去りますか?――そう問いを突きつけているように思えてきた。


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