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原民喜「ガリヴァの歌」[2022年08月07日(Sun)]

原民喜が遺した仕事の一つに「ガリバー旅行記」の翻訳(1951年刊)があるが、後年刊行された「原民喜のガリバー旅行記」(晶文社、1977年)には関連する詩文が加えられた。

その中で印象的なのは「馬」に関する文章および詩だ。

◆「ガリヴァ旅行記――K・Cに――」で民喜は物語をめぐる私的回想をつづり、その最後に、1945年の8月8日、原爆あとの東練兵場で目撃した一匹の裸馬について誌す。
原爆あとの不思議な眺めのなかに……負傷もしていないのに、ひどく愁然と哲人のごとく首をうなだれて」たたずんでいたというのである。
この馬について、「一匹の馬」と題する随想では、「ショウ然として首を低く下にさげている。何ごとかを驚き嘆いているような不思議な姿」だったと記す。

◆もう一つ、次の詩にも「馬」が登場する。



ガリヴァの歌  原民喜


必死で逃げてゆくガリヴァにとつて
巨大な雲は真紅に灼けただれ
その雲の裂け目より
屍体はパラパラと転がり墜つ
轟然と憫然と宇宙は沈黙す

されど後より後より迫まくつてくる
ヤーフどもの哄笑と脅迫の爪
いかなればかくも生の恥辱に耐えて
生きながらへん と叫ばんとすれど
その声は馬のいななきとなりて悶絶す



*憫然(びんぜん)…あわれむべきさま
*〈ヤーフ〉(ヤフー)は、「ガリバー旅行記」の最後、理性を有する馬たちが主である国「フウイヌム」に登場する人間の姿をした、毛深くかぎ爪を持つ生きもの。卑しく貪婪な獣として描かれる。


◆戦争が現出させた地獄図と人間の醜悪な姿。
わずか二連十行の詞章だが、胸に焼き印を押し当てられるように感じる。ピカソの「ゲルニカ」同様の光熱を覚える。


青空文庫原民喜・訳「ガリバー旅行記」および新・日本現代詩文庫「新編 原民喜詩集」(土曜美術社出版、2009年)に拠った。



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