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嵯峨信之「夜の頂上で」[2022年07月30日(Sat)]


夜の頂上で   嵯峨信之


闇の中
レモンのつよい匂いで
ぼくは急にわれにかえつた
人間はじぶんの声がわからなくなつたとき
その声は大きな網で捕らえられるか
それを誰も教えてくれない
もろもろの星は
いつものように夜の頂上を紡いでいる
その頂上で
暁のひかりにぼくの涙がきらめきはじめるのを
いま誰も知らない



『嵯峨信之詩集』(青土社、1985年)より

◆「じぶんの声がわからなくなつたとき」という詩句が考えることをうながす。
それは他者の声が耳を圧しているからか、自らの言葉を失いかけているからか、さもなくば闇夜の空のはるか上の方から、ある者の声がかすかに、しかし紛れもなくハッキリと聞こえるからか。

いずれにしても、わが発する声が意味を成さなくなった瞬間に在ったのは不思議な沈黙であり、それを気づかせたのが「レモン」であったことは鮮烈な感覚だ。

「大きな網」は、闇の中に放り出された「ぼく」を丸ごとすくい取るために必要と思われたのだが、我にかえった刹那、それはもはや意味を成さない。近い未来において「赦されている」自分を直覚したからだ。







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