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池井昌樹「階」[2022年07月11日(Mon)]

2207芙蓉DSC_0302.jpg

芙蓉(フヨウ)


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階  池井昌樹


てれびもらじおもなかったむかし
ほのほかこんでおりました
ほのほはやまからもらってきました
やまはときどきほのほふきあげ
ゆれにゆれたりすることも
ほのほかこんでかおみあわせて
みんなだまっておりました
みずはそらからもらってきました
そらはときどきくろくひびわれ
りゅうがまったりすることも
ほのほかこんでかおみあわせて
みんなだまっておりました
あたりがすっかりしずまると
そらにきざはしかかりました
みたこともないなつかしい
あのなないろのきえたあたりに
だれもしらないところがあって
だれかがまっていることを
たしかにまっていることを
てれびもらじおもなかったむかし
ほのほかこんでほのほみつめて
みんなだまって
またたきながら


『未知』(思潮社、2018年)より

◆三度繰り返される〈ほのほかこんでほのほみつめて〉
炎を囲んでいる人々――互いの表情から思っていることや祈っていることの隈々までを伺いうる近さだ。
だから「みんなだまって」いられるわけだ。

空にかかった階(きざはし)の向こうにある未知の世界は、どんなところか知らないのだが、誰もが待たれていることを知っているから、不安はない。
だから「だまって」いても、その沈黙は深さに見合う豊かさがある。

◆事件や選挙結果をネタに、ああだこうだピーチクパーチクやかましいだけのTVを見せられると、この詩のような解毒剤が必要になる。




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