
シンボルスカ《ここで何が行われていたのか》[2022年05月27日(Fri)]
ここで何が行われていたのかを
知っている者たちは
僅かしか知らない人々に
場所を譲らなくてはならない
――シンボルスカ
◆ポーランドの詩人ヴィスワヴァ・シンボルスカ(1923-2012)の「終わりと始まり」の一節だ(つかだみちこ編・訳「シンボルスカ詩集」土曜美術社出版販売、1999年)。
◆詩は「戦争が終わった後では/だれかが後片付けをしなくてはならない」ということばから始まるのだが、いまだ終結の見えないウクライナ戦争を前にしては、詩全体を引くことはとてもできない。
ただ、今この時点で、上に引いたことばを忘れぬようにして置くことは無益でないどころか、必要だと言ってもよい。
◆「ここで何が行われていたのかを/知っている者たち」はいずれ少数派になり、やがて一人も居なくなってしまう。生き残った者たちも時の鎌の前には無力だというのが最大の理由だが、それ以前に、体験者や目撃者を地上から拉し去ろうと暗躍する者たちが必ず居ることを忘れてはならない。