
クァジーモド「兵士たちは夜に泣く」[2022年05月22日(Sun)]
◆TVが取りあげるウクライナ戦争は局面の変化を伝えるが、報じ方は依然として海外ニュース番組の編集があらかたを占め、日本メディアは安全圏の海外支局からのレポートがほとんど。
それらを切り貼りしながら、防衛省関係者(元幕僚長や研究員)をスタジオに呼んで今後の展開を占う類いのものばかりだ。
将棋の差し手を囲んだ外野が、ああだこうだ談義しているに等しく、生身で戦わされる兵士たちのことを完全に閑却している。
◆岸田首相は、ウクライナ支援として、新たに3億ドルの借款を追加する方針を表明し、バイデン米大統領来日に際し、真っ先にそのことを伝える方針とか。
国会への説明はどうなっている?(それを問題視しないメディアや、このところ国会中継をしないNHKの姿勢を批判する声は決して少なくない。)
◆ロシア人捕虜の声を伝える映像で、味方に撃たれた、という生々しい証言があった。自軍を識別出来ないほどの戦場の混乱。
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兵士たちは夜に泣く クァジーモド
河島英昭・訳
十字架も、幼年時代も、
ゴルゴタの鉄槌も、天使の
追憶すらも、戦争をうちのめすには足りない。
兵士たちは夜に泣く
死を眼前にして、雄々しく、斃(たお)れてゆく
教えこまれた言葉の足もとで
命という武器を投げ出して。
恋人の数だけいる、兵士たちよ、
名もない者たちの流す涙よ。
河島英昭・訳『クァジーモド全詩集』(岩波文庫、2017年)より
前回の「さらなる地獄について」と同じく第五詩集『比類なき土地』(1958年)中の一篇。