
ロシア、ウクライナへの侵攻[2022年02月24日(Thu)]
◆プーチンによるウクライナへの全面侵攻。
多くの専門家もまさかと思っていた急襲だ。
夜9時のNHKニュース、街頭インタビューは日本経済への影響を心配する声を拾い、専門家をスタジオに招いて今後への影響を質問する場面でも、キャスターが並べたのは「経済への影響、難民の発生〜」という順番。
すでにその時点でウクライナ軍・ロシア軍双方に各40〜50名の戦死者が出ており、民間人の犠牲があったことも伝わっていたはず。
戦争に突き進んだ状況で真っ先に取りあげるべきは、人命について、ではないのか?
取りあげる項目の優先順位が上からの意向なのかキャスターの関心事なのか不明だが、「エコノミック・アニマル」がゾンビのごとくNHKを徘徊しているように思えた。
(質問を受けた専門家はさすがに鼻白んだ面持ちで、ポーランドに逃れる難民だけで100万人に及ぶのではとの懸念も出ている、など、ウクライナ国民への影響をコメントの柱にして、経済面の影響については黙殺した。)
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シェフチェンコの詩「カフカーズ」より
小松勝助・訳
山々の背後にまた山脈(やまなみ)が、黒雲につつまれ、
悲しみをふり播かれ、血潮を注がれて。
遠き古(いにしえ)からプロメテに
鷲がその地で罰をくわえ、
神の日にすら肋(あばら)に穴をうがち
心臓を食い破る。
食い破るとはいえ、生気をもたらす血液を
飲みほしつくすことはできぬ――
心臓はふたたび蘇り、
ふたたび笑い声をあげる。
われらが霊魂(こころ)は死することない、
志は死にはせぬ。
そして貪欲飽くなき輩(やから)といえど
海底に畑を耕すことはできぬ。
生きている霊魂(こころ)、
生きている言葉を繋ぐことはできぬ。
神の栄光、おおいなる神
の栄光をなみすことはできぬ。
お前とあい争うのは私たちではない!
お前の所業を裁くのは私たちではない!
私たちはただひたすらに泣きに泣き、
血みどろの汗と涙で
日々の糧(パン)をこねかえすだけだ。
(以下割愛)
谷耕平・編『ロシア詩集』(平凡社ロシア・ソビェト文学全集第35巻、1966年)より
◆ウクライナの詩人、タラス・グリゴーリェヴィチ・シェフチェンコ(1814-61)は農奴の子としてキエフ県モルィンツイ村に生まれ、抑圧された農民の悲しみ、ウクライナ民族の独立と自由のための闘いを数々の長詩にうたった。詩はすべてウクライナ語で書いた。ここに掲げたのもウクライナ語原典からの訳。
◆「カフカーズ」は〈1845・11・18 ペレヤスラウにて〉との日付けをもち、1845年、カフカーズ山地民族チェルケス人との戦いで死んだ、ヤキウ・デ・バリメンに捧げたもの。
ここに引いたのはその冒頭部分。
◆次の二行、プーチン・ロシアに突きつける現下のウクライナの人々の叫びである、と読んでおかしくない。
お前とあい争うのは私たちではない!
お前の所業を裁くのは私たちではない!