飯島耕一「水の磁石は」[2022年01月25日(Tue)]
水の磁石は 飯島耕一
水の磁石は
何年も水を汲み上げた滑車のように死ぬ。
燐のようにきらりきらり光りながら、
まだ光のさしこまない
土の方へと進んで行く。
木の葉が死ぬときは
光のさしこまぬ土を飾るときだ。
そして ぼくはそのうえで
火をつくり
青空につつまれて焔になる。
『現代の詩人10 飯島耕一』(中央公論社、1983年)より。
◆「水の磁石」がいかなるものか判然としないけれど、水が光の支えを得て命を育てる、その働きの指向性をイメージとして表現したものと解して置く。
◆育ての根源である元素の力は、育てた木の落葉とともに一旦死ぬ。
そうして、その「死」は、ぼくがそれを火の種とし、さらに「ぼく」自身が火焔となることによってあがなわれ、讃えられる。
死と蘇生と循環の諸相という宇宙のイメージ、あるいは流転の図。