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及川均「石のごときかなしみ」[2022年01月18日(Tue)]

瀬尾育生『戦争詩論 1910―1945』という評論で及川均という人の次の”戦争詩"に出会った。
新型コロナ感染者が全国であっさり3万人を超え、最多を更新したという日に何となく符合するものを感じたので、孫引きとなるが、写して置く。


***


石のごときかなしみ  及川均


大いなる石の胸うちにあり
そがゆゑのかなしみなるや
石のごときかなしみに
われは九月をけものめきたり
大いなる石のごときは
どよもして生まるる
山河のいとふかきよりする
かの混沌のかなしみなるや
海に来て海とをれば
海は蒼茫とけぶりたり
もだして山にむかへば
山はもだして雲母にくれゆけり
青き日ははた青き日の
わがかしみぞあだに切なる
いつの日にかかく
いかなればかかるをわれはいだきしならん
わが知らぬ劫初よりのかなしみなるや
わがかなしみにあらざるごときかなしみの
大いなる石のごときぞ
胸うちにありてふるるばかりなり
このたえがたきは
ものいはず歴史の深淵をゆきし
炭酸のごとくさわやかに海をこえし
そのけはしきおもひ凝りてわれにうつりしや
わたくしにいだくなにものもなきに
けものめけばいよいよ痛き
大いなるわがかなしみぞ石のごとき


『新日本詩選』(1943年)所収。
瀬尾育生『戦争詩論 1910ー1945』「大江満雄の機械」の【補論3 敗北の暗示】に全篇を引用している(平凡社、2006年)。

及川均(1913-1996)は岩手出身の詩人。
この詩を紹介した瀬尾育生によれば、詩の「九月」とは1942年の9月のことで、この年の6月にはミッドウエー海戦の敗北があり、ガダルカナルへの米軍上陸が8月、補給路を断たれて大半の兵士が戦わずして餓死・病死して行った。1942年9月は〈最も敏感な詩人たちにとって日本の敗戦がはじめてリアルな予感となってあらわれた《夏の終》であった。〉と瀬尾は記す。


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