トンガとコロナ:内外ともに不穏だ[2022年01月16日(Sun)]
◆昨日のトンガ沖海底火山の大爆発、宇宙からの映像を見ると、まるで核爆発でも起こしたかのようだ。日本から8,000kmも離れた所からの衝撃波によると思われる津波が発生。例のない現象に気象庁も説明できない状態だった。
太平洋に面した神奈川は数十センチの津波で済んだが、津波注意報では発信されないはずの「エリアメール」が携帯を20回ほども鳴らし続けてまんじりともしない夜だった。発信システムの不具合によるものだという。部屋のあちこちに置いた家族のスマホが赤ちゃんをあやす「カランコロン」のような警告音を少しズラして鳴らし、続く合成音声も同様にズレたままアナウンスし始める。それが倦むことなく繰り返されるのはなかなかシュールであった。
被害が大きかったはずの南半球の津波は映像が限られていて、トンガにも邦人約40人が在住というのに、安否情報も全く伝えられない。当方に知り合いが向こうにいるのではないけれど、こうした災害発生時、首をすくめた亀みたいにジッとしたまま、邦人情報や現地の被災状況に無頓着なメディアや政府機関ばかりでは、イザという時に役に立たない。無関心は怠惰の別名だ。
知人から転送された情報によれば、今回の火山爆発は百年か千年に一度という規模のもので、この先、寒冷化など地球規模の気象変動が懸念されるという。そう言えば、昨夜の気象庁の記者会見、そうした質問はひとつも出なかった。記者たちの質問力の方がお寒い限りだったわけだ。
◆足もとで起きている新型コロナの大爆発、16日の神奈川の新規感染者は1,751人で2日連続の1,500人超え。東京は4,172人、全国では2万5,658人。
藤沢は昨日が47人だったから、今日はそれ以上だっただろう。
若い世代の爆発の2週間ほど後に高齢者世代の重症者が増えるとの有り難くない予想がある。基礎疾患持ちとしては予測がハズレることを切に願う。
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晩鐘 橋本俊幸
大きな黒い波が地を被い
営みのすべてを押し流し
多くの人の命を奪い去った
行方のわからない人を追い
知ることができない最期を思い
天を仰ぐ姿
無念が赤く燃える夕暮れ
遠くで寺の晩鐘が響くのを聞いた
――思い出していた
中学生の時分 夕刻帰り支度の教室で
担任の理科の教師が話されたこと
鐘の響きが霊たちを寺に連れ戻すという
戦時下 疎開先の寺の住職の話し
同心円に広がる鐘の音の波動は
暮れ方の山々にこだまし
一転その中心に向けて収束への波紋を描き
余韻のうちに霊を引き連れる
夜毎 迷い苦しむ霊を鎮めるため
何処へ行くことができよう
強く心を残して
引き裂かれて残された者は
じっと立ち尽くして
生きなくてはと
たいまつに小さな炎を灯すけれど
真っ暗な夜空に祈りは満ちて
数えきれないほどの星が浮かんだ
『詩と思想 詩人集2021』(土曜美術社出版販売、2021年)より