みくちけんすけ「耳に」[2021年01月25日(Mon)]
◆土曜に発送した会報が無事着いたと、共に編集に携わった方から連絡が入った。
明日26日の中教審総会で付議される「令和の日本型教育」答申について記事にしたので、前日には届けたいと願っていたことが、ともかくも実現できたわけだ。
ホッとすると同時に、700部余りの会報や挨拶文を200枚余りの封筒に入れる作業中、バッハが効果的だったことを思い出した。指揮はトン・コープマンで、あの、音楽をする喜びに満ちた手と顔の表情、上半身の動きを思い浮かべながら印刷物をさばいていると、単純作業も次第に昂揚してくるのだった。
紙を扱いやすいように薄いビニール手袋を着けていたので、CD一枚聴いた頃おいに一旦外さないとムレてしまうのだったが。
◆買物では主にポリエチレンの手袋を使い、入口の消毒用アルコールはほとんど使わない。カートや買い物籠の持ち手を気にする必要から解放される。一店毎の使い捨てである。
ポリエチレン手袋は安価だが、サッカー台備え付けの小さいポリ袋に品物を入れる時に、口を開けやすいものと、滑ってなかなか口を開けられないものとがある。能力差は概ね価格に比例するから正直と言えば正直だ。高いポリ手袋は我が乾燥気味の手指より優秀。
◆試みに図書館でもポリ手袋を使ってみた。閲覧、返却・貸し出しのやりとり。
同好の士は未だ見かけない。これを広めてスタンダードにしようなどという大それた企みは持っていないけれども。
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耳に みくちけんすけ
いちばん最初に耳にしたのは
母胎のふかい湖に脈うつしずかな波音
であったという ほんとうだろうか
くらい隧道をぬけひかりの世界が開けたとき
はじめて聞いたものおとは何だったろう
意識の生じる以前のはなし
物心ついてこのかた蜿蜒と耳に入り
消え去っていった音声の数
最高音から最低音まで
耳はすべての音声を聞いた
耳に聞いた
それら無数のものおとのうち
わすれ難いものはなにかなかったかと
ここは音を脳へ送るだけ
なにものこさないのが仕組み
耳はわが身の存在感を思う
福耳 早耳 聞き耳 耳障り
耳を揃える 耳を疑う
気分転換に眼鏡をかけマスクをして
耳とつれだち木枯らしの街へでかける
詩集『風歌(そえうた)』(土曜美術社出版販売、2019年)より。
◆観世流謡曲と詩の二刀流の詩人は「呼吸、息継ぎに留意し、言葉の流れを意識している」という(詩集あとがき)。
◆今夜の「報道ステーション」、自宅療養をしている人へのオンライン診療が、高齢者にはハードルが高いだろう、という話になった時に、専門医から「電話でも注意すれば、話し方や呼吸の様子から判断できることもある」という一言があった。プロの心構えにハッとする。
楽音は言うまでもなく、仕事中に発するかけ声や語らい、あるいは自然界の音に至るまで、生き物とそれを包む世界の呼吸によってもたらされる。
ふだんあまり意識しないことだけれど、息を潜めて暮らすような日々、注意を払いさえすればそれらの微細な変化に気づくことがある。