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平田俊子「ひ・と・び・と」[2020年10月18日(Sun)]


ひ・と・び・と   平田俊子


あなたの声を聞かせてください
わたしの声を聞いてください

あなたの好きな窓を描いてください
わたしの好きな色にぬらせてください

あなたの湖をちょっと貸してください
わたしの山にのぼってもいいよ

あなたの鎖骨を見せてください
わたしのと片っぽ交換しましょう

あなたの運命線を見せてください
わたしの生命線を少しあげます

あなたの物語にさわらせてください
わたしの歴史を抱きしめてください

あなたの傷を見せてください
わたしの傷あとも見てください

あなたの泣き顔を見せてください
わたしも泣くからそばにいてほしい

あなたが生まれた町の
地図を描いてください
いつかいっしょに行けたらいいね

あなたの影を見せてください
わたしの影とならべてみましょう
きっとふたつはとてもよく似ている

あなたの名前を教えてください
わたしの名前も尋ねてください


現代詩文庫『平田俊子詩集』(思潮社、1999年)より

◆題名、「ひ・と・び・と」と間に点が打ってあるところからすでに、ちょっと待てよ、と思わせる。
ことばはどれも平易だが、「あなたの湖を〜/わたしの山に…」というような意表を突く対句に出会うので、その手前のすんなり読んだ2行にも、何か含意があったのかも、と戻って考え直したくなる。

冒頭の「あなたの声を〜/私の声を…」にしてからが、造作もないはずのことが、実は本当は難しいのだ、と言いたいのだろうか?
この冒頭2行は最後の対句「あなたの名前を教えて下さい/わたしの名前も尋ねてください」と呼応している。

◆ふつうなら出会いの最初に交わす応答が、この詩では最後になっている。
名乗られ・名乗るのがクライマックスであるのなら、そこに至る手前で次々とぶつけていた呼びかけ――「あなたの鎖骨を〜」という飛んだ提案や「わたしの生命線を少しあげます」という度肝抜く申し出などなど――それらは重要度において全く比較にならないのだろうか?

恐らく、そうではない。
名を尋ねこちらも名乗る最初の一刹那に、これらの提案のことごとくが束になって身の内に溢れて来てしまうのだ。
それらのお願いのどれにも応じてくれるという直観と相手への信頼と自負と。

大事な点は、呼べば応えること。どんな突飛な思いつきも無視せず返してくれること。

*******

◆以上のこと、互いの傷を含む歴史を共有すること、似ているところを認めて大切にし、互いの声に耳を傾けることは、男女の間に限らず、国同士の付き合いにも通じそうだ。
初の外遊でベトナム・インドネシアに向かうスガ首相にも是非味わってもらいたい一篇。




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