タゴール〈光の島〉[2020年09月24日(Thu)]
刈入れが始まった。
田んぼわきのイチイにはたいてい雀がいる。
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タゴール『迷い鳥』より 川名澄 訳
310 わたしは夢みる、ひとつの星を、ひとつの光の島を、わたしはそこに生まれるだろう、そして活き活きとした安佚(あんいつ)のなかで、わたしは一生の仕事を豊かに稔らせるだろう、秋の陽に照らされている稲田のように。
◆元の英詩は次のようになっている。
I DREAM of a star, an island of light, where I shall be
born and in the depth of its quickening leisure my life will
ripen its works like the ricefield in the autumn sun.
原詩同様に訳詞も飾り気なしに平易だ。
まなざしは悠揚と来世に向けられているが、それは現世の営みの続きであるようだ。
現身は祈りと確信で充たされている。
*訳語について一点、「leisure」(「レジャー」の原語)を「安佚」としていることについて……
同音の「安逸」の「逸」が「隠れる・それる」のニュアンスが強いのでそれを避け、「くつろぐ・楽しむ」の意味も含む「佚」を選んだと推測する。だが読者は「逸」の字の「安逸」の方に引っ張られて読んでしまうのではないか。
背中にしがみついている過去から自由にしてください、という詩もあるのは事実(325の詩篇など)だ。
しかし、少なくともこの詩に厭世の気分はない。上で触れたように、現世から来世へと同じ歩みを続けてゆく感じがある。
「leisure」のもとのニュアンス、「(許された)自由な時間」を伝えられる適当な訳語はないだろうか。