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おべだふり[2020年06月19日(Fri)]

DSCN3658ホオジロ.JPG
梅雨空で姿を見定めるのが難しかったけれど、ホオジロのようだった。
雨に濡れたか、毛羽立ったシルエットに見える。

*******


素直な疑問符  吉野弘

小鳥に声をかけてみた
小鳥は不思議そうに首をかしげた

わからないから
わからないと
素直にかしげた
あれは
自然な、首のひねり
てらわない美しい疑問符のかたち。

時に
風の如く
耳もとで鳴る
意味不明な訪れに
私もまた
素直にかしぐ、小鳥の首でありたい。
 



『10ワットの太陽』(思潮社、1964年)所収
小池昌代編『吉野弘詩集』(岩波文庫、2019年)に拠った。

◆聞いてわからないことばを「鳥のさえずり」にたとえることがある。
この詩ではその鳥が、聞き分けぬ人間の声かけに〈不思議そうに首をかしげた〉と立場を反転させているところが面白い。

小鳥の仕草から、素直に「わからない」ということを恥ずかしいことと思う習慣になずみ過ぎて、いつか根源的な問いかけすら忘れて惰性で生きている我に気がつく。

思えば「わからないもの」に疑問符を付けて心にとどめて置くことは、世界を見つめ直す時への用意であるはずで、何のささやきかけか耳元で鳴った意味不明の響きは、世界の方から唯一自分だけに与えられた問いかけであるのかも知れない。

◆川崎洋が、この詩を紹介しつつ〈六十年以上生きてきて、わたしは何度「知ったかぶり」をしたことでしょう。〉と顧みている(『教科書の詩をよみかえす』ちくま文庫、2011年)。

むろん、知ったかぶりは人の世の常で、その証拠に、と言って、日本各地の方言を挙げる――

いぎたない(神奈川県津久井群)
えげたふり(青森県三戸郡)
おかべ(山形県飽海(あくみ)郡)
おべたふり(北海道・秋田県鹿角郡・青森県上北郡・岩手県気仙郡・宮城県栗原郡)
きだふり(宮城県石巻)
こーしゃ(新潟県佐渡)
こまいめ(島根県隠岐島)
つらがしこ(徳島県)
なまざき/なまげき(茨城県稲敷郡)

〈右はわたしの知ったかぶりではなく『日本方言大辞典』(小学館)でしらべたものです。〉と断っているのもおかしい。

◆我が生まれ在所の言い方は上から4つ目、ただし濁点が付いて「おべだふり」である。
直訳すれば「覚えている=知っているフリ」ということになる。

◆眺めわたせば教場から議事堂にいたるまで、到るところ「おべだふり」だらけなのだったが、自分がソレだ、と告白する誠実なる勇者はごく一握りしかいない。


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コメント
オベダフリ、懐かしいですね。小学校時代、オベダフリの得意な級友がいて、みんなにオベサマと言われていました。尊敬語で軽蔑するという高等戦術、子供も侮れません。
Posted by:伊東  at 2020年06月20日(Sat) 09:20

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