〈とおく問う〉[2020年05月30日(Sat)]
キキョウソウ。
桔梗に似た小さな小さな紫の花を真っ直ぐ伸ばした茎のてっぺんに咲かせていた。
歩道の縁石のわずかな隙間を居場所と定めて。
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返信 伊藤悠子
問いを抱えながら
カーテンを開けると
星がひとつまたたいて目が合った
これが問いへの返信と星は言う
今みつめている人は君だけでないとしても
とおく問うたのは
君なのだから
まっすぐ受けとればよい
胸底ふかく受けよ
詩集『まだ空はじゅうぶん明るいのに』(思潮社、2016年)より
◆星と「目が合う」という体験をする人はまれだろう。
だが、こうした詩に出会うと、いつの日か窓を開け宵闇にきらめくものから啓示を得るという体験が自分にも生涯に一度くらいあるかも知れない、という気がしてくる。
あるいは、胸中に持て余しているものが耐えがたくなった時には、この詩にならって夜空を眺めてみるという手がある、と知って置くだけでも良い、と思える。
◆「問う」人はたいがい、自分の内側に探照灯を向けているものだ。
しかし、その明かりをいったん消してみれば、黒々とした外の闇の中にかすかな明滅があることに気づくだろう。
ちっぽけな自前の灯りを消して外界に心を開けば、「とおく問うていた」分、答えの方も遙かなところから、実は真っ直ぐに届くものとして用意されていたことに気づく。
それを受けとめるにずいぶん時間を要したとしても。