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財部鳥子「氷菓とカンタータ」[2020年05月21日(Thu)]

DSCN3405サトキマダラヒカゲ(里黄斑日影)A.jpg

葛の葉にとまったサトキマダラヒカゲ(里黄斑日影)

*******


◆詩人の財部鳥子(たからべとりこ)さんが先週5月14日に亡くなった。享年87。

経歴等は全く存じ上げないまま、以前たまたま手にした詩集の2行に心をひかれ、引用させていただいた。

その詩集の巻頭、詩集名にもなっている「氷菓とカンタータ」を紹介する。
この詩集で高見順賞を受賞、詩集刊行時には日本現代詩人会会長を務めておられたこと、中国の現代詩紹介に尽力された方ということも、今回知った。
謹んでご冥福をお祈り申し上げます。



氷菓とカンタータ   財部鳥子
   ――中国・四川大地震
                    
 

空色のアイスキャンデーには
何のシロップが使われているのか
幼い頃からの大切な謎である

スーパーで買った似て非なる氷菓を食べていると
村落のはずれで
キャンデー売りの
自転車の「氷」の旗が鐘を振る
あの記憶の音は
遠いカンタータに似ている
(オルガン チェンバロ ファゴット)
そこにさびしいキャンデー売りの鐘を混ぜて
地震で崩れた校舎の
石材の隙間にいる少年を
わたしは世界で一番さびしい子と認定しよう
君はクラッシュという英語を覚えたばかり
教師に発音をほめられたばかり
空色のアイスキャンデーが脳髄に降る
大地が揺れる 者のとき
君は覚えたてのコトバを叫びましたか
「雨や雪が天から降るのと同じように」と
カンタータは歌うはずだけれども
音楽はそこで聞こえなくなってしまう


『氷菓とカンタータ』(書肆山田、2015年)より



財部鳥子「氷菓とカンタータ」-A.jpg
『氷菓とカンタータ』
装幀は夫君の金山常吉さん。

◆四川省大地震は2008年の5月12日だった。中学校の倒壊によって多くの子どもたちが命を失った。
詩人は中国・満州で育ち、日本に引き揚げて来たときには14歳、地震の犠牲となった中学生たちにかつての自分を重ね合わせているのだろう。

詩に登場する人間たちが少年であれ老人であれ、男であれ女であれ、作者の魂は融通無碍と言いたいほどに彼らと己の間を往還する。あるいは彼らの目と心で自分と世界と歴史を眺める。

その後、日本でも2011年3月11日の大地震が起きた。詩集あとがきでそのことに触れ、「戦後何年」という意識に「大震災以後」を生きるという意識が逃れようもなく加わったことを引き受けて詩を書く覚悟が記されている。


***

【旧記事参照 「不法難民」というゆがんだデマゴーグ(2017年10月14日)】
https://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/651

音は時空を超えていくのに
言葉は胸に沈んでつみかさなる


   *財部鳥子「月も水も髪も――評弾学校」(同詩集)の一節



この記事のURL
https://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/1592
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