CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る
« ウィルスには適切な予防と手当。改憲は不要。 | Main | 〈井戸が旗が会議がきらいだ〉 »
<< 2020年06月 >>
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
最新記事
カテゴリアーカイブ
月別アーカイブ
日別アーカイブ
議事堂の下にはガランと大きな洞窟が[2020年02月01日(Sat)]

DSCN2669.JPG
ナバナ(菜花)。
昨年と同じ家庭菜園に今年も植わっていた。但し撮影は今年が2週間遅れ。終わりに近い。

*******


模型山河  小野十三郎


靄に包まれた林道の
すぐ前方に
巨きな館(やかた)が淡く現れた。
中央の塔の影は見おぼえがある。
国会議事堂はこんな山奥にあったのだ。
石段を上り
重い扉を押して、中に入ったら
意外や、そこは
天井が高い洞窟だった。
博物館に据えられているような
方形の大展示台が
床面積一ぱいに設置されていて
鳥瞰すると
日本列島の全地形の模型が
つらなる山岳のひだの影を起伏させていた。
天井に数本の管球が光っているが
館内の照明は暗い。
それに入館者はいまおれの他にだれもいない。
台の横に列んでいるボタンの一つを押したら
陰然たる模型山河のところどころに豆球の灯が同時についた。
それは大飛行場の所在地だった。
そうか、こんな仕掛けかと
となりのボタンを押すと
こんどはコンビナートがあるところに灯がついた。
また、次のボタンを押したら
日本海と太平洋の海岸線に
原子力発電所の位置を示す灯が点々とともった。
きらめく灯が首飾のごとく集中しているところもある。
いま、それらの灯が一せいにともっている。
だが、夢の中でも
おれが知りたいのは
人間がいるところだ。
人間の在りかを発見するためには
館内の電源を切って
台上の全景を闇にもどす他ない。
天井の管球の灯も消さなければならない。
洞窟の上の階では
会議が行われているようだが
それはおれにはかんけいない。
灯を消すことが先だ。
おれは全部の灯を消した。
消して真暗になったところにいまいる。
すると、おれの手はまたボタンにふれた。
押したら
暗闇の洞窟に
ぽっとまた豆球が一つともった。
死んだ友よ、おまえがいたところだ。
忘れていたが、
闇の中の
中部山岳地帯とおぼしきあたりに。
会議はいま終ったのか
上に音がする。
椅子から起ったやつらが
手に紙きれを持って
ぐるぐる廻りをしはじめたらしい。
洞窟の上で。


小野十三郎詩集『樹木たち』(土曜美術社、1982年)に拠った。

◆夢の中、森林に囲まれた議事堂の中の洞窟にジオラマがあったというのだ。
ボタンを押すと大飛行場や原発のある場所の豆球が点く。
それらは物質文明の在りどころを示してはいるだろうが、人間の生息を証拠立ててくれるものではない。

いちど闇に戻し、手に触れたボタンを押したら、亡き友のいた場所が示された、という。
生きている人間たちの居る場所が分かったわけでは、未だない。

洞窟の上はどうやら議場で、票決が始まったのか、歩きまわる音が聞こえる。
だが、そこも「おれ」が探している「人間」の居る場所ではない、と観念されているようだ。
あたたかな血が流れているほんものの人間はどこに居るのだ、と闇中を彷徨する「おれ」の歯がみが聞こえる。

◆この詩の発表は1980年の『歴程』5月号。

この年は前年アフガンに侵攻したソ連に抗議するアメリカの対ソ制裁で年が明けた。モスクワ五輪ボイコットが唱導されて日本も追随。柔道の山下泰裕(現JOC会長)が涙をのんだ五輪である。
同じく前年・79年の11月に起きたテヘランのアメリカ大使館占拠は80年に入っても膠着状態で、80年4月に人質救出の奇襲作戦を決行するも失敗、カーターからレーガンへと大統領が交代する81年1月まで長期化した。

国会関係ではロッキード事件、小佐野賢治がロッキード社から受け取った20万ドルは自民党の浜田幸一代議士のカジノ借金(ラスベガスで150万ドル)に充当されたことが判明、4月に浜田は議員辞職を余儀なくされた。
こうしたドタバタや自民党内の主流vs反主流の対立状況が災いして80年5月には大平内閣への不信任案が可決してしまう。(その先は大平急死、衆参同時選挙へとなだれ込む。)

小野の詩は、そうした政界の抗争と混乱を踏まえているのだろう。

議場の真下は実際はガランとした洞窟だ。そうした空虚な場所で「生きている人間」を探す、ということは徒労でしかないのだが、そうと知りつつ闇に落としてリセットすれば手がかりぐらいは見つかるかも知れない、と「おれ」は望みを捨て去っていないようだ。

さて、その40年後の2020年に再び、似たような話が繰り返されていることに啞然とする。
だが少なくとも現在のこの国に関しては、1980年が牧歌的に見えるほど政府および国会は逸脱を重ね続けている。

違憲安保法制、モリカケ問題、カジノ疑惑、「桜を見る会」での公職選挙法違反にも頬被りし、さらには検察支配によって独裁体制の完遂に向けて集団でひた走るさまは烏滸(おこ)の沙汰を通り越して狂乱と呼ぶべきものだ。

*1980年前後の事件については毎日新聞社『昭和史全記録』(1989年)を参照した。
この記事のURL
https://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/1483
トラックバック
※トラックバックの受付は終了しました
 
コメントする
コメント
検索
検索語句
最新コメント
根来珠青
銃剣道 歴史に目をふさぐおぞましさ (03/29) 当ブログ管理人
ジャーナリスト・安田純平さん解放との報【追記】 (10/26) 3億円で買える銃と弾
ジャーナリスト・安田純平さん解放との報【追記】 (10/25) マキシミリアナ・マリア・コルベ
コルベ神父のこと その2 (06/23)
若き音楽家リュカ・ドウバルグ (06/09)
タグクラウド
プロフィール

岡本清弘さんの画像
https://blog.canpan.info/poepoesongs/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/poepoesongs/index2_0.xml