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〈光がさあっと溢れて〉[2020年01月27日(Mon)]

DSCN9991Mさんの甕.jpg

◆甕に誌された文字にひかれて撮った。
「景に触れ情を怡(よろこば)すは人生の清福」と読むのだろうか。
「目に触れる景色を楽しむのは心やすらぐ幸せだ」という意味かと思う。

主の許しを得て甕の写真を撮った日は、ポツポツ雨が降っていた。
甕の中、小さな波紋の下には金魚たちが泳いでいた。

小さな生き物たちを愛した主は遠い世界に旅立った。
それは多分、次の詩のような桃源郷。

***


生   川崎洋

夜があけると
灌木の隙間という隙間の肌を染めて
光がさあっと溢れてきた
岩清水は限りなく湧き あとから あとから
朝日の矢が澄んだ水に入っていくので
山女魚の腹の下などに胸鰭にあおられて
小さな砂けむりがあがっているのが
目がさめるようにはっきりわかった
雲は讃えられず
太陽も頌められず
ただ福寿草の鮮かに黄色い花粉にまみれた
精巧な蜂達が忙しく飛び交うていた

丘にはもう開墾に働く人の影が
遠くのぞまれた
その廻りを犬がはねているのも
其処では休みなしに土塊はくずされ
岩は取り除けられ
草は青いまま引き抜かれて空をとんだ
時折 男が鍬の手を休めて女に話し掛けて
いるのが見られた
すると女も顔をあげて笑いながら何か男に
答えている様子だった
白い歯が遠くから沁みるように見えた
乾草の山のうしろから子供が何人も何人も
出てきては走っていった
鮎が水面をはねて陽をあび
それを知らぬ気に
牛は川から歌を飲み続けた

陽の下に輝いているそれらがあるだけで
文字も言葉もなかったから
羊もたんぽぽの葉も同じものだった

そうだ僕は見た 川岸の途中で
若葉をびっしりつけた枝の涼しい木陰で
さっさと馬を洗っていく腕まくりした若者が
馬を本当に愛しているのを見た
その向こうに限りない悦びで川が折れまがり
背の高い草の彼方へかくれていくのを見た


小海永二・編『現代の名詩』(大和書房、1985年)より



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