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〈生命の源を入れ替える〉[2019年11月22日(Fri)]

DSCN2282-a.jpg
クチナシ(梔子)の実。不思議な形だ。熟しても割れないので「クチナシ」だとか。
遊行寺本堂裏手にある「小栗判官眼洗いの池」の前で。

*******


ことりのうた   宮城ま咲

父が小学校に上がるより前に
ちょっと象徴的な
八月十五日が来た

「もうこんな姿
見ていたくない」と
誰かが言ったのか
崩れかけの浦上天主堂がほんとうに崩される頃
父は県北の家族と離れて
大学の下宿に移った

家野町には
小鳥がいただろう
梢を貸す ありきたりな木は
それぞれの傷を他言せず
足元に
珍しくなかった木造家屋や
珍しかった西洋建築の
床柱やガラス窓やかわらを
思い思いに眠らせる
小鳥は 鳴いただろう
すこやかな未来を約束された若木では
少し遠慮がちに
くずおれる痛みに怯える幹のそばでは
ふりきれるほど けたたましく

あの小鳥は
生命の源を入れ替えるごとに
改良された体の形を獲得し
いまだって どこかで
愛の歌をさえずっている
父が聞いた音色に似ているだろうか
屋根に積もった落ち葉の上
子供のいない公園の隅
黒い袋をびっしり並べた畑
ことりの目には 何が見える

 
 *家野町…長崎大学キャンパス北側の町

宮城ま咲詩集『よるのはんせいかい』より (土曜美術社出版販売、2016年11月22日発行)

宮城ま咲(まさき)は長崎県生まれ、現在も長崎に住む詩人。
小学生の時に亡くなった父を詠んだ詩を中心に編んだ詩集。あとがきを次のように書き始めている。

「あー、私かなしかったんや」と思えるようになってやっと十年くらい経った今年、父の二十七回忌でした。
終わったことだから……と背を向けて「前向き」に生きてきたつもりでしたが、今思うとそれは自分の気持ちに蓋をしていた日々でした。蓋を開けると苦しくなったり、かなしくなったりしたけど、やっと自分が自分の時間を生きている実感がしっかりとしました。


奥付の発行日「11月22日」という日付けには亡き父への思いが込められているだろう。
そのように人は愛する者と自分とがともに生きた時間(およびともに生きることがかなわなかった時間をも)心に刻み込んで生きて行こうとする。
それは生命の源を入れ替えて過去から未来へと向かうことだ。
小鳥にあってはさえずりがそれを促し、人間にあっては言葉がそれを促す。
8月ナガサキを胸に刻む人々もまた。

◆フランシスコ・ローマ教皇の長崎訪問を前に、付箋が目に留まった一冊を手にしたら、偶然にも長崎ゆかりのこの詩集、付箋は上の詩に貼ってあった。


宮城ま咲「よるのはんせいかい」-A.jpg


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