聞いてください! [2011年06月15日(Wed)]
この前、旭川から下川への移動中、ぼくは名寄市郊外のバス停で下川行きのバスを待っていたのです。すると、ちょうどその時、雨が降ってきたのです。
はじめは、「このくらい、濡れても大丈夫かな」と思っていたのですが、雨はだんだん強く、大粒になってきて、あんまり大丈夫とは言えない感じになってきました。傘は、持っていませんでした。しかも小さなバス停には待合所もありません。近くに雨宿りする場所はと思って辺りを見回しましたが、ありません。木さえも付近には立っていません。まわりは一面牧草地、そしてまばらに民家と畑。ぼくと空との間には、落ちてくる雨を遮るものは何もありません。頭上には雨で湿って重そうな雲が広がり、そこから後暫くは雨が降り続けそうな気配でした。 バスが来るまで十数分、その間に雨はますますぼくの髪を濡らし、顔を流れ、服を重たくし、体の熱を奪うでしょう。その時、ぼくにできることはたった一つしかありませんでした。そう、鞄の中からタオルを取り出して、それを頭に被ることでした。明らかにそれはかなりみっともない格好だとは思いましたが、しかし、そうするよりほかに仕方がないではありませんか。あと少し、バスが来るまで、でもバスが近付いて来たら、やっぱり恥ずかしいからタオルは取ろうかな。 そう思いながら佇んでいると、ぼくの目の前に、バスではない、一台の乗用車が止まったのです。乗っていたのは見知らぬ年配の女性、ぼくに向かってビニール傘を差し出して、「これ、使いな。終わったら投げてもいいから」 おお、なんとありがたい。まさにアメイジング・グレイス、奇(くす)しきみ恵み。ぼくは本当に感動してしまいました。 ああ、ぼくは間違っていました。ぼくの狭くて傲慢な心、浅薄な悲観や絶望、思い上がった不機嫌や不寛容、すべて心から懺悔します。 まったく、トルストイの言うように、人の中には愛があり、人は愛によって生きるのだなあと思いました。 |