先日は、日本救急医学会の学生・研修医部会の近畿ブロックが開催されたオンラインイベントに参加してきました。
救急医学会の学生・研修医部会ということで、救急医になることを目指しつつも、その先のキャリアとして公衆衛生医師になる場合どういうものになるのかといったことについて、富山県の小倉先生と私の2人から、救急医としてのキャリアを踏まえた現在の公衆衛生医師としての仕事についてそれぞれお話ししました。
当日は救急医療に興味をお持ちの医学生や研修医のみなさんが15名ほどご参加いただいたのですが、講演の後にスモールグループに分かれて、
Q.一旦臨床を離れて公衆衛生の分野に来てもまた臨床に戻ることは可能なのか
A.3〜5年程度までのブランクであればすぐに戻れると思うが、本人のやる気さえあれば20年程度のブランクがあっても何とかなると思う
Q.厚生労働省の医系技官になることは考えなかったのか
A.地元に生活の基盤ができていたこともあって積極的には考えなかった。独身だったら東京へ行くことも考えたかもしれない。
などの様々な質問に答えさせていただきました。
今回は、幹事の研修医さんが地域枠の方であったり、学生さんが今年のオンライン合同相談会(PHCC)に参加されていたりしたことから、この企画を考えていただいたとのことですが、私たちもそういったご縁を今後も大切にしていきたいと考えています。
この記事をご覧の医学生や若手医師のみなさん、全国で公衆衛生医師はもちろん不足していますが、救急医も大変不足しています。大変そうというイメージで語られがちな救急医ですが、どんな疾患や外傷にも対応できる救急医は大変やりがいのある仕事でもあります。将来の進路の選択肢の1つに救急分野も加えていただきつつ、その先のセカンドキャリアとして公衆衛生医師も選択肢に加えていただけると大変嬉しく思います。
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ところで、私は以前保健所長として10年間勤務してきたのですが、2020年から本庁へ異動して「地域医療支援センター」というところで医師偏在対策や医師確保などに関する仕事をしています。
私が所属する大阪府では、全国で唯一へき地と呼べる地域が従来から存在してこなかったため、いわゆる医師の地域偏在の課題は比較的小さかったのですが(それでも府内で医師が全国平均より少ない地域があってその対策も進めています)、それに対して救急医療や周産期医療など、政策医療と呼ばれる分野に従事する医師が少ないという、診療科偏在の課題に対応してきました。
その中で、地域枠卒業医師や自治医大卒業医師に対して、卒後義務の中でそれらの診療科や府内の医師少数地域で勤務してもらうよう、府内の大学や病院、関係機関や関係団体と調整を進めるのが私たちの役割で、本庁に勤務する公衆衛生医師の一部はそんな仕事もしています。
将来の進路を卒後義務という形で縛るのは職業選択の自由の観点からいかがなものか、といったご意見があることは承知していますが、実際に卒後義務に従事した経験があり、その中で学生時代には全く考えていなかった公衆衛生分野で現在働いている私としては、実はそんなところに思いがけない出会いや明るい未来が待っているかも知れないのではないかと思っています。
私たちとしては、地域枠医師や自治医大卒業医師に医師確保対策としての卒後義務をお願いしつつ、彼らのキャリア形成を応援していきたいと考えながら、その他の医学生や若手医師の先生方も含めたみなさんが活躍できる環境づくりをこれからも応援していきたいと考えています。
(大阪府健康医療部保健医療室 宮園将哉)