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2024年09月26日

【島根県】社会医学系専門医プログラム説明会を開催します

島根県内の保健所や県庁で働きながら、社会医学系専門医を目指すことができる、「ご縁の国しまねプログラム」についての説明会を、10月18日(金)に開催します。

島根県は「人口減少に打ち勝ち、笑顔で暮らせる島根(島根創生計画)」を目指して、地域包括ケアシステム構築や医療体制整備、健康づくりなど様々な課題に対して地域とともに取り組んでいます。
説明会には指導医である保健所長はもちろん、このプログラムで専門医を取得した若手医師に加え、現在専攻医真っただ中の公衆衛生医師も出席します。島根のプログラムについて理解を深め、公衆衛生医師や社会医学系専門医に関するあなたの興味や疑問点をぜひ、聴かせてください。

 241018プログラム説明会チラシ(参加申し込み付き).jpg

【島根県社会医学系専門医プログラム説明会】
日時:2024(令和6)年10月18日(金)午後6時〜7時
会場:島根大学医学部附属病院みらい棟1階みらいラウンジとZoom(ハイブリッド)
内容:@「社会医学系専門医プログラムが目指すもの」
    +医学生向け地域医療実習、医師向け地域医療研修とインターンシップの紹介
    雲南保健所 所長 柳樂真佐実
   A「公衆衛生医師の醍醐味 〜霞ケ関から島根県へ〜」
    松江保健所 医事・難病支援課 医療専門員 溝上 悠介
   BQ&Aコーナー
    終了後、食事会(別会場)を開催します
前日(10月17日)までに申し込みをお願いします

その他お問い合わせは、島根大学医学部地域医療支援学講座  
eMail: career@med.shimane-u.ac.jp まで。

(島根県健康福祉部 石倉 凱)
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2023年12月22日

公衆衛生ウィンターセミナー(PHWS)2023 を開催しました!

昨年度から新たに始まった社会医学系専攻医のためのオンラインイベント、公衆衛生ウィンターセミナーが12月9日(土)に開催されました。

今年のテーマは
「地域の実情」に応じて課題を解決するには?さあ、考えよう。
とし、

「全国の若手公衆衛生医師が、それぞれの地域の課題を自分事として捉え、自分の立場で組織のためになにができるのか、主体的に組織に働きかけることで、地方自治体からよりよい公衆衛生活動を展開していきましょう」という趣旨でセミナーを開催しました。

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「地域の実情をじっくり観察してみよう」という意図で、今回は「虫眼鏡」をモチーフとしました。
虫眼鏡で頭の中を覗くと「?」が飛んでいますが、あるときふと「!」に変わる
そんな瞬間を体験してほしい、という思いを込めました。

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今回のセミナーでは、参加者が主体的に考え意見を述べてもらうことを重視しました。グループワークで各グループの意見をまとめ、参加者自らがスライドを作成し、全体に対して発表するまでをすべてオンラインで実践していただきました。

➤発表スライドの一例
社会医学系専門医研修の課題と解決策の提案(Aグループ)

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高齢者施策(医療と介護の連携を中心に)の課題と解決策の提案(Eグループ)

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地方自治体に所属する公衆衛生医師だけでなく、産業医や大学院生、公衆衛生医師への転職を予定している臨床医など多様な背景を持つ29名の方にご参加いただきました。講師3名、スタッフ21名とともに、講義・グループワーク・発表を通じて、大いに学び、交流を深めることができ、大盛況のうちに終了しました。

➤最後は「考える」ポーズで集合写真を撮りました

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ご参加いただいた皆様と運営にご協力いただいた皆様のおかげで、素晴らしいセミナーにすることができました。本当にありがとうございました。

(運営委員長 大阪市健康局健康推進部 植田英也 ほか主催者一同)
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2023年11月29日

【栃木県】「公衆衛生医師ONLINE TALK CAFÉ」を開催します!

現役の公衆衛生医師(県職員)が公衆衛生行政のやりがいや魅力をお伝えするトーク・カフェ(オンライン座談会)を開催します。医師だけでなく、医学生も歓迎です。地域も問いません。行政(本庁・保健所)、公衆衛生に関心のある方は、是非ご参加ください!

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○栃木県「公衆衛生医師ONLINE TALK CAFÉ」
【日時】令和5年12月16日(土)・23日(土)14:00〜15:30
【WEB】Zoom会議システム
【内容】保健所や本庁で働く公衆衛生医師の役割・業務紹介/勤務条件・ワークライフバランス・専門医/質問タイム/個別相談(希望者のみ)など
【対象】栃木県職員(公衆衛生医師)の受験をお考えの方/公衆衛生行政や保健所業務に興味のある医学生・研修医・医師の方
【申込】参加を希望される方は開催日の前日までに参加申込フォームから登録いただくか、栃木県保健福祉部保健福祉課企画調整担当(人事)宛てにメールで御連絡ください。

また、上記以外にも当事業班では、全国から相談を受け付けております。ご相談はこちらから受け付けております。

(参考)

(栃木県保健福祉部医療政策課 早川 貴裕)
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2023年07月21日

【新潟県】公衆衛生医師のインターンシップ(新潟県福祉保健部 松澤知)

新潟県の行政医師(医師7年目、行政5年目)の松澤です。

今回は「新潟県春休み医学生インターンシップ」の振り返りを通じ、公衆衛生医師が働く現場に行ってみる・やってみること(見学・インターン)の意義を紹介します。新潟県では、医学生インターンを随時受け付けており、特に今年は春だけで30名以上を受け入れました。

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新潟県のインターンシップは、特に決まったカリキュラムはなく、私たちがどのようにして働いているのかを見て、実践していくことを基本に進めて行きます。

具体的には、主に福祉保健部長の松本晴樹先生の元で、地域医療構想や医師確保、新型コロナ対策などの政策がどのように考えられ、行われていくのか(=政策立案)を間近で見ます [インプット]。また、特に興味を持った分野については、各プロジェクトチームに入ってさらに具体的な内容を聞いてもらってから、実際に検討・成果物を提出してもらい[アウトプット]、成果物の改善点などを話し合う時間が設けられます[フィードバック]。

また、インターン生には、県の行政医師としてのモチベーションなどについて私からお話する時間を設けています。今回は、この時間を大変有意気だったと言っていただいた琉球大学3年生(当時)の大城先生のブログを紹介させていただきます。私としても心が動くきっかけを提供できたこと本当に嬉しく思っています。

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<写真 左:大城先生、右:松澤>

★大城先生ブログ★     

このように、公衆衛生医師が働く現場に行ってみる・やってみること(見学・インターン)には大きな意義があると考えています。

新潟県では、医学生のインターンシップを随時受け付けていますので(初期臨床研修病院見学も兼ねてもらえれば交通費補助も可能です!)、医学生のみなさまからのご連絡をお待ちしております!

また、当事業班の「ブログ&相談チーム」では、随時、全国のみなさまからの個別相談に応じています。医学生や医師のみなさまからのご連絡をお待ちしております!

(新潟県福祉保健部 松澤知)
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2022年10月01日

原子力防災(北海道庁保健福祉部(前・北海道岩内保健所長)村松 司)

 健康危機管理の中で、最近とりわけ注目されてきているのが、CBRNE災害と呼ばれる大規模かつ大きな災害です。
 CBRNEとは、Chemical(化学)、Biological(生物)、Radiological(放射性物質)、Nuclear(核)、Explosive(爆発物)の頭文字をまとめたもので、いずれも広範囲に甚大な被害をもたらすものです。

 私は本年3月まで、倶知安保健所との兼務ではありましたが、泊原子力発電所の立地する岩内保健所の所長をしておりました。
 岩内保健所の所長は、あまり考えたくない事態ではありますが、原子力発電所において万一の過酷事故が発生した際、泊原発から距離にして10kmほど離れた共和町にある「北海道原子力防災センター」に詰めて、国の現地対策本部の医療班の副班長(班長は国から派遣される)として、現地の負傷者等の医療調整を、近隣の医療機関や場合によっては大学病院などとも連携して行います。また、現地住民への安定ヨウ素剤の内服指示の伝達なども重要な任務です。

原子力防災センター.png

 北海道では毎年秋頃に、このような原発の過酷事故を想定して、現地住民にもご協力いただいての大規模な避難訓練を伴う、「原子力防災訓練」を行っています。昨年度は私も岩内保健所長として参加し、実際に防災センターに詰めて危機管理のオペレーションに参加しました(本当は写真などがあると良いのですが、保安上の理由から内部の撮影は厳禁なのです)。残念ながらコロナ禍のために住民参加の避難訓練は中止となりましたが、国や原発立地周辺町村などとも協力して、実際の危機管理のオペレーションを動かすことで様々な課題が抽出でき、実りの多い訓練であったと思います。

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 今はコロナ禍で保健所の健康危機管理が注目されていますが、健康危機は感染症だけではなく、こういった災害も想定して、訓練などを通して常に「起こってはならないが、起こったらどうする」を頭に描いておく必要があります。それが平時からの危機管理です。

 それもまた、保健所長の大切なお仕事です。

(北海道庁保健福祉部地域医療課・地域保健課・感染症対策課(前・北海道岩内保健所長) 村松 司)
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2022年05月28日

適塩ランチ(山形県最上保健所長 鈴木 恵美子)


 このランチ、塩分・カロリーどのくらいだと思いますか?
  
適塩ランチR4-1 メイン斜め.jpg適塩ランチR4-1 メイン.jpg

 わたしたち最上(もがみ)保健所では、健康増進事業の一つとして、食堂で定期的に「適塩ランチ」を提供しています。職員だけでなく、事前に広報して地域住民の皆さんにも召し上がっていただいています。

 食材や調味料、調理方法の工夫で、食塩相当量2.5gに抑え「食塩控えめでもおいしくいただけるランチ」をコンセプトに、無理なく減塩ができるランチとなっています。

適塩ランチR4-1 チラシ.png
 適塩ランチは食塩以外にも
  @カロリーを650Kcal程度(ごはん100gの場合)
  A野菜120g以上使用(今回は150g以上あります。)
  B果物つき
 の基準を設定し、栄養バランスにも配慮しています。

 今回のキーマカレーでは、ひき肉は今流行りの大豆ミートで代替しトマトのうまみで塩分を調節しています。また、ポテトサラダには、マヨネーズを一切使っていませんがまったく差がないおいしさでした(秘密はレシピをご覧ください!)。PDFダウンロードはここから

 レシピはこちらからダウンロードしてください(PDF)

 東北は山形県の北端に位置する最上地方では、北国の山間部特有の食事情から、塩分の過剰摂取とそれに由来する生活習慣病が長年の大きな健康課題でした。

 山形県全体での数値ですが、昭和53年(1978年)の食塩の平均摂取量はなんと20.3g。
約40年後の平成28年(2016年)は10.0gと約半分に減少はしたものの、全国平均9.6gおよび目標値(男性7.5g未満、女性6.5g未満)まではまだまだ遠い道のりです。

 保健所のしごとの一つとして、こうした生活習慣病予防のための栄養指導を、市町村と協力して行っていくものがあり、管理栄養士・保健師が主役として活躍します。公衆衛生医師はもっぱら試食担当(´∀` )です・・・もちろん助言もしますよ!

 ところが、「減塩は美味しくない!」と、ご高齢の住民の方々からはなかなか指導を受け入れてもらえず、とても苦労してきたのだそうです。そんな管理栄養士さんたちの経験からの発案で始まった適塩ランチは、とても好評で、昨年度の事業ではレシピ集や調理のコツをまとめたカレンダー(2022年)を作成し管内の様々な施設、事業所へお配りしました。

 山形県のホームページからもダウンロードできます。2022年もまだ半年残っていますので、ぜひ興味のある方は使ってみてくださいね。

 また、本事業はこのたび日本公衆衛生協会より第54回衛生教育奨励賞をいただきました。保健所で働く仲間にとっても、とても励みになります。

適塩ランチ カレンダー見本.jpg

 カレンダーのダウンロードはこちら
(右サムネイルからでもダウンロードできます)

 最上保健所「すこやかもがみネットワーク事業」ポータルサイトはこちらhttps://www.pref.yamagata.jp/314025/kenfuku/kenko/kenko/sukoyakamogami/sukoyakamogami_home.html

 レシピを見ても、忙しかったり料理が得意でなかったり、自分はちょっと・・・というあなたも大丈夫。お醤油をお酢やレモン汁に替えてみるということを習慣づけるだけでも、将来のリスクが減らせるかもしれません。地域住民の健康を守るにはまずは自分自身の体をいたわってみる、そんなきっかけになってくれればうれしいです。

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2022年05月16日

医学生向けの講義をしてきました(大阪府健康医療部保健医療室 宮園将哉)

先日は関西医科大学の1年生の地域枠学生のみなさんを対象に、地域医療セミナーとして地域医療に関する講義をしてきました。これまでもいくつかの大学で毎年講義をさせていただいていますが、ここ数年はコロナ禍の影響でオンラインでの講義を依頼されることもあり、教員の先生方の日々のご苦労を体感させていただいていました。


関西医大については、感染拡大の時期を避けて講義の時期を設定されるなど、他の大学に比べてもかなり工夫をされて毎年対面授業の機会を確保していただいていましたが、やはりオンラインに比べると対面では学生さんのリアルな反応を見ながら講義ができるので内容にも緩急をつけやすく、対面授業のほうがいいなと感じてしまうのは私自身がすでに若くないからかも知れません。

関西医大では、大阪府の地域枠だけではなく、静岡県や新潟県の地域枠や大学特別枠の学生さんに対して毎年このようなセミナーを開催されていますので、彼らがこれからの学生生活の中で単に医学の勉強をするだけではなく、このような機会を通じて地域での医療の現状について理解を深め、将来の進路を考えたりや医師としての心構えを身につける参考にしてほしいと思います。


私の場合、この大学以外にも関西のいくつかの大学で非常勤として講義なども担当させていただいていますが、他府県においても各大学医学部では地元の保健所長などの公衆衛生医師を非常勤講師に招いて、社会医学や公衆衛生分野の中で地域保健や保健医療行政に関する講義などの取り組みが行われています。

また、コロナ禍のために最近2年ほどは中止されていることもあるようですが、社会医学や公衆衛生学の実習として、実際に保健所へ行って実習を行ったり、インターンシップとして都道府県庁などで業務体験を行っている大学もあると聞いており、大阪府でもいくつかの大学から毎年のように学生実習を受け入れています。

多くの医学生さんは、学生時代の私のように社会医学や公衆衛生学に全く興味がない方がほとんどだと思いますが、たまたま聴いた私の講義が何かのきっかけになって、将来私たちと一緒に仕事をしてくれる公衆衛生・行政医師が1人でも増えるといいなと思っています。

(大阪府健康医療部保健医療室 宮園将哉)
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2022年03月23日

公衆衛生医師の非日常 〜2022年4月に着任された方のために〜(東京都 関なおみ 先生ご寄稿)

東京都の特別区保健所で公衆衛生医師として激務をこなす傍ら、現場からの目線で書籍をいくつも執筆されている、関 なおみ 先生より、特別にご寄稿をいただきましたので、公開させていただきます。

文章自体は題名の通り新任(となるであろう)公衆衛生医師向けに書かれていますが、これから公衆衛生医師を志す学生や若手医師、そして我々現役の公衆衛生医師にとっても「刺さる」名文です。

関先生、ご寄稿いただき、まことにありがとうございます!

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公衆衛生医師の非日常
〜2022年4月に着任された方のために〜


はじめに


今年度から新しく公衆衛生医師になられた方へ。ようこそいらっしゃいました。一緒に働くことが出来るのを嬉しく思います。


今回あなたが配属されたところが保健所であっても、都道府県の保健衛生部署であっても、これからしばらくの間経験するのは、「日常」ではなく、「非日常」の日々であると認識しておいていただくと、仕事を理解しやすいかと思います。


というのは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が発生して以来、感染症対策が保健所業務の中心となるという、異常な状況が生じているからです。


東京都特別区の場合、これまでの公衆衛生医師の日常は、どちらかというと母子保健や精神保健、健康づくりといった予防医学を中心として構成されており、各種健診・検査業務、健康教育、事例検討や調整会議、感染症診査協議会などの定型業務をつつがなく行い、年間計画に基づいた研修会・普及啓発イベント・訓練等をこなすことが主な業務でした。


これに加えて管理職は、年中行事として他部署の主催する会議への出席や議会対応、国や都道府県の説明会や会議があります。


その合間に住民や医療機関からの相談や苦情に対応し、必要に応じて保健師等と訪問し、各種学生実習を受け入れ、食中毒や集団感染事例が発生すれば生活衛生課等と一緒に動き、地域診断を行い、新規事業の導入を検討する、といったところでしょうか。保健所は地域の関係団体と連携し、住民の健康を守っていく立場にありました。


20201月にCOVID-19が国内発生して以降、保健所の電話は鳴り止まなくなり、発生届のFAXが溢れ、国の事務連絡が次々と届くメールボックスは常に容量制限を超えていて、突然招集される臨時の会議や説明会が乱発され、議会やマスコミからの問い合わせが増え続け、日常業務ができなくなりました。


集団健診は縮小され、対面での講演会、研修会や会議が次々とオンラインに変わり、講堂や会議室は応援職員用の事務室になりました。


健康づくりよりも危機管理が優先され、医師や保健師だけでなく、事務職もCOVID-19に関わる仕事ばかりするようになり、多数の庁内応援職員や人材派遣職員が事務室内に溢れるようになりました。


すでに2年以上このような状況が続いているものの、戦後日本の保健所の歴史からすれば、これは明らかに「非日常」です。



今、現在進行形で経験していることとは



現在公衆衛生医師の私達が直面している現実は、今世紀最大規模の新興感染症の流行で


2019年末、世界の片隅で新たなウイルスによる感染症が発生しました。


このウイルスは人の移動によって瞬く間に全世界に拡大し、人々が密集するような場やイベントを通じて大規模な集団感染を形成しながら、陽性者を増やし続けました。徐々にウイルスの性質や感染経路は明らかになり、PCRによる検査方法が確立し、全世界で陽性者数の全数把握が始まりました。


治療方法やワクチンがない状況において、多くの国で死者が発生しました。日本においても陽性者が増え続ける中、受け入れ病床はあっという間に足りなくなり、入院隔離だけでなく、自宅療養、宿泊療養といった概念が誕生し、即座に運用が開始されました。


また、発生届の電子化、入院調整本部の設置、医療機関や患者本人による健康観察や濃厚接触者の同定など、これまで手が付けられていなかった公衆衛生対策も進みました。


ウイルスは変異を重ね、何度も波となって襲ってくる中、三密回避(新しい生活様式)、手指消毒・マスク着用(ユニバーサルマスキング)、クラスター対策(封じ込め、前向き調査)、緊急事態宣言(外出制限、ロックダウン)、まん延防止措置、接触通知アプリ等、各国で様々な対策が生み出され、ウイルスの広がりを阻止することにチャレンジしました。mRNAワクチンが開発され、100%を目指した住民接種が実施される中、点滴による治療薬が開発され、経口薬も承認されました。


現時点において都内では、ウイルスの病原性に基づき、健康観察が50歳以上や基礎疾患を有する者に限定され、宿泊療養や自宅療養に係る食料・パルスオキシメーターの配送といった調整が、保健所業務から切り離されるところまで効率化が進んでいます


つまり私達は現在、新興感染症の発生が確認され、新たな感染症の一つとして認知され、人に重篤な影響を及ぼす感染症として対応せざるを得なくなり、法改正が行われ、サーベイランスや公衆衛生対策、医療体制の仕組みが組み立てられ、定着していく過程そのものを、日々ウイルスの増減と共に体感しているという、非常に稀な状況をリアルタイムで経験しているのです。


COVID-19発生から202110月までの経緯については、詳しくは拙著 保健所のコロナ戦記TOKYO2020-2021』を参照ください)



歴史に足跡を残す者として


患者数の多い感染症の全数把握を続けることは非常に大きな労力である一方、集積されたデータや検体のゲノム解析により、季節性インフルエンザ等では憶測に過ぎなかった日本社会におけるウイルスの伝播について、どこからやってきてどのように流行を形成するのかが、ある程度解明されたことは非常に画期的だと思われます。


また、住民接種において100%の予防接種率を目指すためにはどのような体制とシステムが必要であり、どのような広報戦略やリスクコミュニケーションが必要かも、段々分かってきました。


流行の波を繰り返す毎に検証を重ねつつ、このような新たな知見を集積し、今後の感染症対策に活かすことができる制度の設計や、現場レベルでの定着に向けた体制整備等については、まだまだ途中の段階です。


1947年にGHQにより「新しい保健所」が日本に誕生した瞬間を経験した人は、もはや現場に残っていません。保健所という行政組織が、内務省管轄の住民の監視役から、各種専門職による科学的知見を備えた健康づくりの拠点へと生まれ変わった瞬間として、「モデル保健所」の落成式は歴史的な瞬間であったことでしょう。


それまでの日常業務が廃止され、非日常となり、新たに配置された多くの専門職による新規事業が開始され、その後それらが現場に定着し、日常業務になるまでには、様々な試行錯誤があったに違いありません。


非日常を体感した職員の創意工夫により、制度として脈々と受け継がれ、私達はその功績により、恩恵を預かっています。


いつの日か、「臨時対応」が「定型業務」となり、この「非日常」が新たな「日常」になった時に、COVID-19との闘いはいったん終結することでしょう。それまでの道のりを闘っていくのは、今、ここにいる、皆さんをむ、私しかいません。


だからこそ、今ここにある先の見えない状況においても、どうか皆さんは、ご自身が歴史に足跡を残す者であり、未来の新しい「日常」を作る者なのだという気概を持ち、目の前にある業務に取り組んでいただけたらと思います。


人々の健康が守られ、ともに幸せに暮らしてゆくために、保健所はあります。みなさんが、これまで培ってきた医学の知識と経験を活かしながら、末永く、この「公衆衛生」という分野の仕事に取り組んでいただければと、心より願っております。


東京都 特別区保健所 保健予防課長 関なおみ



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関先生のご著書については、下記サムネイルをクリックいただくと詳細がごらんになれます。

とても読みやすく、コロナ第5波以前の東京都の状況が、その場にいたかのように臨場感をもって伝わってくる、公衆衛生や感染症防疫に興味のある方必読の一冊です。

是非、書店・電子書籍サイトでお求めの上、ご一読ください!

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(紹介文担当:北海道保健福祉部地域医療課・地域保健課・感染症対策課 村松 司)

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2021年10月04日

大阪府で行政医師・歯科医師の新たな人材育成プログラムを策定しました

大阪府では、これまでも若手の行政医師・歯科医師に対して、各々が配属された保健所や本庁などの各所属において、職場での実践を通じて業務知識を身につける育成手法(OJT)と各種研修を組み合わせながら、人材育成を進めてきました。しかし、近年、健康医療行政をめぐる環境が大きく変化し、業務が多様化している中で、行政医師・歯科医師はこれまで以上に高い専門性が求められるようになってきています。

そこで、行政医師・歯科医師職員独自の取り組みとして、令和3年度から社会医学系分野の基本領域である社会医学系専門医の制度が目指す「多様な集団、環境、社会システムにアプローチする」という専門性に加え、行政医師・歯科医師が持つべき「研究推進と成果の還元能力、倫理的行動能力等」という専門性をさらに追加した、新たな人材育成プログラムを立ち上げました。
・社会医学系専門医の研修プログラムで獲得を目指す能力(コンピテンシー)に加え、大阪府で独自に定めた行政医師・歯科医師が持つべき専門性(コンピテンシー)を新たに追加。
・社会医学系専門医の研修プログラムで獲得を目指す能力(コンピテンシー)に階層と優先順位をつけ、早期に獲得すべき能力を優先できるように人材育成を進める。
・行政医師・歯科医師の間で、他の保健所等他所属の先輩から指導を受けたり、若手から先輩に対して相談ができる体制を確保。

大阪府では、大阪大学の社会医学系専門医研修プログラムに研修連携施設として登録されており、専門医取得を希望する方は、大阪大学プログラムを通じて専攻医になることができます。これらを含め、社会医学系専門医研修プログラムに基づく研修や各種研修と組み合わせながら、行政医師・歯科医師が持つべき専門性の効率的・効果的な獲得を目指しています。
*(参考)大阪大学社会医学系専門医研修プログラム

今後入庁される行政医師・歯科医師職員のみなさんが、その専門性や能力を効果的・効率的に獲得し、公衆衛生活動の実践力と質を向上させ、府民の健康や医療体制の改善に貢献できるキャリアを形成してもらえるよう、私たち先輩医師たちも若手医師・歯科医師のみなさんを積極的にサポートしていきたいと考えています。

(大阪府健康医療部保健医療室 宮園将哉)
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2021年05月20日

島根X鳥取 公衆衛生医師が振り返るクラスター対応

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