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2024年06月02日

議会との関わりを紹介します(群馬県健康福祉部感染症・疾病対策課 武智浩之)

わたしはこの投稿時点では行政医師になって15年目です。そして県庁の課長職に就いて2年目です。令和6年度は感染症や難病、アレルギー疾患、熱中症などを担当していますが、令和5年度は健康づくり、歯科口腔保健、食育、認知症、地域包括ケアなど担当する課で仕事をしました。今回のブログでは議会との関わりについて紹介します。


群馬県議会は県民の選挙によって選ばれた県民の代表である県議会議員の集まりで、大きく分けると1年間に3回開催されます。県議会は、条例や予算など県政の大切なことを県民に代わって話し合い、そして決定します。ほかにも、県行政の執行状況を監視・評価したり、県民の意見に基づいた政策の立案・提言を行います。


県議会には本会議と委員会があり、条例や予算等の議案が県議会に上程されると、本会議と委員会で話し合いが行われます。本会議では、議案や県の仕事に関する質疑を行うほか、議会としての最終的な意思決定を行います。委員会は、その話し合いを専門的、効率的に進めるために設置されます。



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それでは令和63月に開催された令和6年第1回定例会での関わりを紹介します。定例会の本会議では、議員が施策の状況や方針等について、質問をしたり報告を求める「一般質問」が行われます。この定例会では「健康寿命延伸対策」「歯と口の健康に関する取組」等について一般質問されました。一般質問の質疑においては事前に議員からそのご意向を聞き取り、丁寧に答弁の準備を行います。この一般質問では健康福祉部長が答弁されました。


一般質問がなされることによって、対応すべき課題が一層明確になり、群馬県の政策・制度が県民のくらしのよりよい基盤であり続けることにつながります。群馬県議会の当日の様子はホームページから視聴できますのでぜひご覧ください。


また、わたしが所属する健康福祉部の所管事項は健康福祉常任委員会で審査・調査されます。常任委員会では、議案等に関して、委員(県議会議員)は自由に質疑し、意見を述べます。委員会には、実際の業務を担当する課長等も出席していますので、より詳細で自由、活発な議論がなされます。


この常任委員会では質問内容によって、わたしが答弁することもありました。要約すると、このブログのはじめに記載した自分が担当する業務に関連する議案や質問があったときに主担当として関わっていくということです。


議会に関心を持たれた方はぜひお住まいの自治体の議会ホームページをご覧くださいね。


(群馬県健康福祉部感染症・疾病対策課 武智浩之)


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2024年02月12日

FETP研修に参加しています(金沢市保健所 北岡政美)

病院、大学院(公衆衛生)を経て、金沢市8年目の公衆衛生医師です。金沢市では主に感染症対策、食品衛生、病院の立入検査、医療安全、産業医業務などに携わってきました。熱意ある上司の導きと自分のやってみたい気持ちのタイミングが合致し、FETPの受検機会を得ました。20234月よりFETP研修に参加しており、その概要についてご紹介します。


FETP(エフイーティーピー)はField Epidemiology Training Programの略で、実地疫学専門家養成コースと呼ばれ、日本では国立感染症研究所での2年間の実務研修コースとして、1999年に設置されました。世界各国でFETP研修が実施され、専門家養成が行われています。コースの目的は感染症を中心とする健康危機事象を迅速に探知して適切な対応を実施するためのコアとなる実地疫学者を養成し、その全国規模ネットワークを確立することです。


コースの大きな柱として、アウトブレイク調査、サーベイランス、リスク評価、疫学研究、学会発表や論文発表などの情報発信、国内外とのネットワーキングがあります。FETPといえば感染症のアウトブレイク調査などの現地での活動のイメージが強いかもしれませんが、日々継続的に行い、活動の要となるのはサーベイランスです。


EBSEvent-based surveillance)とIBSIndicator-based surveillance)の両輪で、感染症を中心とする健康危機事象として対応すべきことが起こっていないかを継続的、系統的に監視し続けています。EBSはインターネットの情報や公式情報、知り合いからの情報、うわさも含むもの、IBSは感染症発生動向調査などが相当します。変か(いつもと違う)、ひどいか(重症度など)、拡がるかの観点で、気になる事例を検討し、対応をするかどうかの判断と必要時の対応を行っています。


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最近の出来事でいえば、ネットワーキングのひとつとして、WHO西太平洋地域事務局でのFETP fellowshipという8週間のプログラムがあり、機会をいただき参加してきました。日本での研修を活かしながらEBSなどを行い、他国のFETP fellowWHOスタッフと働くことで、日本のFETP研修を客観的に見る機会になるとともに、立場が変わることで視点や対応が変化することを実体験することができました。


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情報を系統的に継続的に見続けることで、「いつもと違う」に気が付くことや、得た情報をどのように解釈し、対応につなげていくか判断する力を養うことは、感染症に限らず行政での業務に活かせると感じています。ご興味のある方はぜひホームページをご覧ください。

実地疫学専門家養成コース (FETP-J) (niid.go.jp)


(金沢市保健所 北岡政美)

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2024年01月10日

自治医大医学生の公衆衛生学実習(宮崎県日向保健所 豊嶋典世)

みなさま、こんにちは。今回は宮崎県福祉保健部からの報告です。

個人的には後進の育成はライフワークなのですが、県のミッションにもなっている公衆衛生医師確保のため、本庁で行われた自治医科大学医学科5年生の公衆衛生学実習に参加してきましたのでその模様を報告します。

令和5年度は4人の医学生が本県での公衆衛生学実習に参加しています(うち3人は本県出身者です)。実質2日間半での本庁実習で、なかなかタイトスケジュール(トータル5日間の実習を保健所と本庁とで折半)です。

11月14日の午後から始まった実習1日目は、行政医師の業務説明に続き、予定されているワークショップのテーマ設定(今回は宮崎県の健康課題からチョイス)、担当課へのききとり、情報のとりまとめとディスカッション....議会対応か...って思うほどには忙しいです。

今回のテーマは2つ、
 ・男子チーム:健康増進のための1日+1000歩対策
 ・女子チーム:HPVワクチン接種の普及啓発策
でした。身近な課題を自分事として捉え、県民の行動変容を促すためにできることを考える、実現可能な計画を練るプロセスを体験してもらいます。

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本庁実習2日目。担当課への再確認とそれぞれのチームの意見をまとめたのちにプレゼン資料を作成し、部長・次長・担当課長の前で自分たちオリジナルの若者視点の解決プランを力強く提示してくれました。部長も「多くのことを教えてもらい、大変ためになりました」と絶賛でしたので、皆さんのプランはこれからの宮崎県の施策にも活かされるはずです。

今回の実習を通して、ポピュレーションアプローチという公衆衛生のおもしろさを学べていたら嬉しいです。実習に参加した学生さんと将来本県で一緒に働けることを夢みて、私もこれから一層精進します。

その日の夜は宮崎の食文化を学び、お互いにとても楽しい時間を過ごせました!ご協力頂いた皆さま、ありがとうございました。

(宮崎県日向保健所 豊嶋典世)
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2023年12月07日

重症難病患者を対象とする災害訓練を行いました(徳島県阿南保健所 郡尋香)

徳島県入職10年目の郡です。今回は、勤務先の阿南保健所で企画した災害訓練についてご紹介します。

多くの保健所では、難病対策として、相談や訪問支援などの個別支援、医療費助成、地域の保健医療福祉ネットワーク構築、人材育成、普及啓発などを行っています。その中には地域で過ごす難病患者の災害対策も含まれています。

医療依存度の高い難病患者では災害時の避難や移動も大変で、平時の準備がより重要となるため、関係者に呼びかけて訓練を行いました。メンバーは、協力患者さん、ご家族、ケアマネジャー、訪問介護、訪問看護、人工呼吸器メーカー、地域包括支援センター、地元・阿南市の関係部局(保健・障がい・防災担当)、消防、地域住民(自主防災会・民生委員)と、多くの参加がありました。

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協力患者さんは自宅での垂直避難訓練を経験されていたため、今回は発災から数日経過した想定で施設間移動を訓練しました。避難先の病院から福祉避難所の特養までの移動です。

施設間の移動では調整も多く、支援者同士で重ねた打合せや訓練で役割を確認し、関係を深めることができました。人工呼吸器、吸引器の他にも必要な物品は多く減らしても荷物は大量でしたが、地域の方が運搬役を担いスムーズに移動できました。訓練とは異なり、発災時に支援者が揃うことはないため、その点も踏まえて備える必要があります。

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振り返りでは、協力患者さんが「みんなの顔を見て力が湧いてきた」と仰っていました。また、地域の方の「訓練を自主防災会活動に活かしたい」というコメントに、とても心強く感じました。

今回の訓練対象者は1名だけです。しかし、他の災害時要援護者支援とも共通したり、地域全体の仕組みに反映できることもたくさん確認できました。訓練の企画実施は時間も労力も必要ですが、得られるものも大きいですね。
(徳島県阿南保健所 郡尋香)
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2023年11月20日

高校3年生にHIV・性感染症予防の出前講座を実施しました!

高松市保健所の行政医師の藤川です。卒後、初期研修を経て保健所に入庁した年から、新型コロナ等を含めた感染症対策に長らく取り組んでいます。

この10月末に、保健所による高松一高3年生へのHIV・性感染症予防の出前講座を行いました。高松一高は当保健所から徒歩数分ぐらいの距離にあり、HIV・性感染症予防教育の出前講座は毎秋の恒例行事となっています。特に3年生はあと半年で大学進学など新たな門出を迎えますが、親元から離れて安心な大学生活を送っていただくために、私が保健所に入庁した年からこの講座を依頼され(当時は訳も分からず「ぷれいす東京」さんの性教育研修など慌てて勉強に伺いました)、今ではおなじみの定例行事となりました。

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本講座は、一方的な講義スタイルではなく、保健師の司会による「先生と生徒によるHIV検査のロールプレイの実演」や、「みんなで〇×ウルトラクイズ(70〜90年代の一世風靡した某有名なテレビクイズ番組名から拝借)」などを行いながら、仲間たちと一緒に語らいながら楽しく学ぶ機会となっています。

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今回は新しく改築された体育館内の講堂をお借りしての実施で、まるで大学のような広くてキレイな場所で驚きました。3年生全員262名+教員の先生方らにお集まり頂きましたが、ウルトラクイズ実施時には生徒さん達も大変盛り上がっていました。今年からはキャッチアップ世代向けのHPV9価ワクチンも無料接種できるため、高3生にはこちらもしっかりアピールいたしました。(ワクチンの説明時、生徒さん同士がお互いに接種したかどうか確認している場面もあったようです)

このような仲間同士での学びや共有体験を通じて、困ったときの対処方法を信頼できる大人や医療機関に相談できるように、備えて頂けたら何よりです。

(高松市保健所 藤川 愛)
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2022年05月25日

【公衆衛生医師の日常】社会医学系専門医の指導医資格が更新できました(大阪府健康医療部保健医療室 宮園将哉)

先日、社会医学系専門医協会かIMG_8091.JPEGら指導医認定証が送られてきました。

社会医学系専門医の具体的な議論が始まったのは2016年で、そのころに私が委員として参加させていただいた研修プログラム管理委員会に出席すべく、毎月のように東京に行っていたのは懐かしい思い出です。当時はここまで大きな枠組みのルールづくりに参加したのは初めての経験だったので、重い責任を感じる一方で大きなやりがいも感じていました。

特に、こういった新しい仕組みのための組織をどうマネジメントするのか、このプロジェクトをどうマネジメントするのか、そのプロセスをどうマネジメントするのかといったことについて、各学会・団体の代表のすごい先生方のやり方を間近に拝見することができたことは(たぶん当時の委員の中で私が最年少だったと思います)、私にとって大変貴重な経験でした。

ちなみに上記にある「組織をどうマネジメントするのか」「プロジェクトをどうマネジメントするのか」「そのプロセスをどうマネジメントするのか」の3項目は、「社会医学系専門研修プログラム整備基準」の中で「専門医が経験すべき総括的な課題」としてあげられている項目ですので、私自身がこの経験を通じて勉強させていただく大変貴重な機会だったと思っています。

公衆衛生分野の仕事の中では、特に都道府県庁や厚労省などの勤務になるとこのようなルールづくり、システムづくりの仕事に関わる機会が結構あり、上記の専門医協会での経験は今の業務の中でも活用させてもらっています。そういう意味ではこの委員会に参加すべくご推薦いただいた先生方には感謝しかありません。

今回、指導医認定証が手元に届いたのをきっかけにそんなことを思い返していました。みなさまにもこの資格や仕組みをさらに有効に活用していただきさらに大きく育てていただけると、制度の創成期に関わった者としてはこれ以上の喜びはありません。今後もみなさんと一緒に制度をよりよいものに育てていきたいと思いますので、引き続きよろしくお願い致します。

(大阪府健康医療部保健医療室 宮園将哉)
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2022年05月20日

【公衆衛生医師の日常】藤井聡太九段の将棋には本当に隙がないのか(福島県相双保健所長 堀切 将)

新型コロナウイルス感染症が流行し始めて、はや2年半が経過しようとしています。自身の生活を削るような日々を過ごしてきた行政医師の先生方も少なからずいらっしゃることと思います。時には、仕事を離れた話題に触れるのも良い気分転換ではないかと思い、私の趣味のひとつについての考察を述べようと思います。

○命題はたぶん、真である
この一言で終わらせては余白が広すぎてしまいますので、私では「たぶん」真であるとしか表現できない、ということも含めて考察を続けます。将棋に興味のない方でも、棋士、藤井聡太九段(以下、藤井九段)の名前はご存知だと思います。その藤井九段に関するニュースを見ますと、藤井九段の指す将棋が、「隙がない」と表現されることが多々あります。

ここで疑問なのですが、記者や将棋ファンは、藤井九段の棋譜(対局の手順の記録)を見て、「なんと隙のない将棋だ」と感嘆できるのでしょうか。私の棋力では、藤井九段の棋譜を追っても、どのあたりが他のプロ棋士でも気付けない手なのか、見抜くことができません。アマチュアの高段者であろうと、たといプロ棋士であっても、全ての指し手をきちんと理解できていなくても不思議はありません。それにもかかわらず、プロ棋士も含めた、多くの将棋ファンたちは何故、藤井九段の将棋には「隙がない」と評価するのでしょうか。

○「隙がない」の発生源
今から10年ほど前、2012年4月22日のことです。NHKは毎週、プロ棋士によるトーナメント戦を放映しており、この日に放映された対局は、佐藤紳哉六段(当時の段位。以下、佐藤六段)対豊島将之七段(当時の段位。以下、豊島七段)。その際、各対局者へのインタビューも放映されるのですが、NHKの番組ということもあり、ごく一部の例外を除き、当たり障りのない受け答えになるのが常道でした。

しかし、この日の佐藤六段の内容は衝撃でした。対局相手である豊島七段の印象を聞かれて「豊島?強いよね。序盤中盤終盤、隙がないと思うよ。だけど、俺は負けないよ」と答えたのです。この台詞は、プロアマ問わず、将棋界を席巻しました。その後、どれだけの人たちが公私問わずにこれを真似したことか。当時はまだプロではなかった藤井九段(10年前の段階で、この子は天才だ、と注目されていたのです)すら、対局で負けた後に「序盤、中盤、終盤、隙だらけでした」とリップサービスしているほどです。

ここではご紹介しませんが、この一連の流行をまとめた動画は、巨大動画サイトで簡単に見つかります。そしてその頃から、棋士の棋風や対局内容を表現するのに、「隙がない」と言っておけば、将棋を「知っている人」の意見だと思わせることができるようになりました。以降、時間が経過することでこれらの背景を知らない人も、どうやら棋士や将棋の内容を評価するには「隙がない」という言葉が使われるようだ、と学び、どんどんと拡散していった、と考えられます。

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○豊島七段の強さの証明
将棋に詳しくない方こそ、ここまでで疑問に思うことがありませんでしょうか。佐藤六段の言葉遣いが異質だったとはいえ、「豊島七段が強い」ことや「序盤中盤終盤、隙がない」ことは、そこまで印象に残る言い回しなのでしょうか。このことに言及した文章を、私は見たことがありません。ここを考察してみます。

豊島七段は現在こそ、藤井九段のライバルと目されておりますし、ここ数年の充実ぶりから、将棋界のトップクラスの実力者と言えます。今年度のNHKでの棋戦でも優勝しています。しかし、10年前のまだ21歳、七段の時点で、「豊島七段が強い」と言い切れたのでしょうか。この答えは、是、です。若いプロ棋士が、今後どのくらい活躍できるかを判断する基準はあるのです。プロになった(=四段になった)年齢です。

若くしてプロになった棋士ほど、その後活躍していますし、20歳を過ぎてからプロになった棋士が大きな活躍をするのは稀です。将棋界で、中学生のうちにプロになれた棋士は、今までに5人しかいません。加藤一二三九段、谷川浩司九段、羽生善治九段、渡辺明九段、そして藤井聡太九段です。藤井九段を除き、全員が将棋界で最も古くからある称号、名人を獲得しました。だからこそ、藤井九段は、プロになった時点からすぐに騒がれたのです。では、豊島七段はどうだったか。

将棋のプロ棋士になるためには、プロ棋士の養成機関である、通称、奨励会の入会試験に合格し、昇級、昇段を重ねて四段にまで到達しなければなりません。奨励会入会試験に合格するには、アマチュアで県代表クラスの実力が要求されますが、豊島七段は、史上最年少の9歳で入会しています。また、プロになる一歩手前、三段に到達したのも、藤井九段に更新されるまでは、これも史上最年少でした。そこから少し足踏みをしたものの、晴れて四段となったのは16歳であり、プロになった平均年齢より十分若い。従って、豊島七段が「強い」ことは正しい、と言えます。

○佐藤六段は真実を述べていた
そして、豊島七段の将棋を、「序盤中盤終盤、隙がない」と評するのは正しいのでしょうか。豊島七段に限らず、将棋のプロになる人たちは、それまでに将棋の基礎はすべてできているわけで、例えば、水泳の個人メドレーの日本代表選手に対して、「バタフライ、背泳ぎ、平泳ぎ、クロール、どれも速い」と評するようなものです。

つまり、佐藤六段は実は、普通のことしか言っていないのです。私が佐藤六段のインタビューを面白いと感じたのは、その立ち振る舞いや口調もさることながら、「実は当たり前じゃないか」と思わせてくれたところなのです。

将棋において「隙がない」という表現ができたのは、以上のような経緯があった次第で、当初と様変わりしてのことであったとご理解いただけたと思います。そして、藤井九段の将棋に隙がないのはおそらく正しいのですが、ほとんどの人は、このことをきちんと証明できないまま使っている、ということもご理解いただけたと思います。

○おわりに
それにしてもこの「隙がない」という言葉ですが、最初に佐藤六段が発言し(発生)、テレビ地上波やインターネットで広がり(拡散)、内容が少しずつ変化し(変異)、普遍的に使われるようになった(共存)わけで、これこそまさに、ウイルスが人間社会に馴染んでいく過程そのものだな、と感じる次第です。

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今回の記事は、先日「公衆衛生情報」という雑誌の「期待の若手シリーズ〜私にも言わせて!」というコーナーの原稿を依頼されたのですが、「何を書いてもいいよ」というお言葉を真に受けすぎて書いたものです。公衆衛生と全く関係がないという理由でボツになり、雑誌にはすっかり書き直したものが掲載されています。

実は上記の記事が最初に書いた原稿なのですが、こちらの原稿のほうが力を入れて書いている上に、書き直した原稿は時間に追われての執筆でしたので、やや不本意な出来だったなと反省していたところでした。そんな折に事業班の先生方にこのボツ原稿を読んでもらったところ、面白いからブログに書いてくれと大変ありがたいお誘いを頂きましたので、こちらに書かせていただきました。ご笑覧いただけると幸いです。
(福島県相双保健所長 堀切 将)
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2022年05月14日

【公衆衛生医師の日常】受援力(北海道保健福祉部地域医療課・地域保健課・感染症対策課 村松 司)

今回は公衆衛生医師のお仕事の紹介ですが、私の仕事ではありません。

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当事業班のメンバーで、公衆衛生医師仲間でもあります、神奈川県立保健福祉大学ヘルスイノベーション研究科の吉田穂波先生の執筆された本です。

私達公衆衛生医師は、災害発生時には自分たちのお膝元をしっかり守ることはもちろんのこと、被災地におもむき現地の公衆衛生活動の支援を行ったりします。「支援」という言葉がわからない方がいないと思いますが、「受援」という言葉は、この被災地公衆衛生支援活動(いわゆるDHEATと呼ばれる活動です)の研修を経て初めて知りました。

ただ、この本に書かれているのはそのような大きな話ではなく、普段の生活や仕事の中で「人に頼る力」の必要性とその効用についてです。自分の「弱さ」を許せないと、きっと他人の弱さも受け入れることができません。

「弱さ」を持つことは決して悪いことではなく、それをしっかり認識し、受け入れ、そして他人を頼るスキルを学ぶことで、とても心が楽に、軽くなります。そんなことを思い知らせてくれる本でした。

このブログの性質上、書籍販売サイトへの直リンクは避けますが、検索ですぐに見つかりますし、電子書籍でも読めます。

こういう本の執筆もまた、「公衆衛生医師のお仕事」です!

私の個人ブログの文章を一部修正の上転載したものであることをご了承ください(村松)
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2022年05月06日

【公衆衛生医師の日常】3万人弱の住民さんたちに育てられて(香川県小豆保健所 前保健所長(現・東讃保健所長) 横山勝教)

香川県には県型の保健所が4つ(小豆、東讃、中讃、西讃)と中核市の高松市保健所の合計5つの保健所があります。その中でも、最も管内人口が少ないのが小豆島にある小豆保健所です。香川県の公衆衛生医師が不足していたことから、以前はこの小豆保健所長は県庁の公衆衛生医師が兼務する状態が続いていました。

2020年4月、3月末に定年退職される本庁医師の後を引き継いで、新型コロナウイルス流行の兆しのある中で私が新米の保健所長として、最も管内人口の少ない小豆保健所に着任いたしました。

まずやったことは、小豆島をはじめ、豊島、小豊島、沖ノ島の管内4島の島民が重症化した場合の搬送体制を整えること。当時、小豆保健所管内には新型コロナウイルス感染症患者が入院できるベッドは小豆島中央病院の4床のみ。万が一、クラスターが発生したらどうしようもありません。

国土交通省のフェリーの安全管理規定を調べ、フェリー会社4社に加えて、小豆消防、高松消防、小豆島海上保安署とも個別に回って協議を重ね、比較的余裕がある場合と緊急を要する場合の搬送方法について整えました。

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次にやったことは、島民にその時その時に新型コロナウイルス感染症について分かっていることを丁寧に伝えるとともに、テレビなどの情報を見て抱えた不安を和らげること。着任早々、老人会の集まりでみんなに話して欲しいと頼まれたので、感染経路や対策についてお話に行きました。その時にお礼でもらったのが写真のスモモ。

この後、別の老人会にも呼ばれ、社協や老人会の広報誌などにも投稿することになりました。写真はありませんが、今度はそのお礼として大量の小鯵もいただきました(^^;

島で患者さんが出はじめてからは、クラスター対策をしながらも「誹謗中傷の貼り紙を感染者の家に届けるのではなく、病気の人にお見舞いの食べ物や千羽鶴が届くような島に」「お互い道ですれ違う時には距離は離れるけれど、遠くから挨拶をして心は離れないような島に」しましょうというメッセージを土庄町と小豆島町の放送で流してもらうようにしました。

第3波で初めて大きなクラスターが出た時には1週間以上保健所に泊まり込みになりましたが、2町の保健師さんたちも応援に駆けつけてくれましたし、住民さんたちも保健所での検査に皆さん非常に協力的で、早期収束に向かって一致団結してくださり、助けていただきました。

コロナ対策だけでなく、犬猫、食中毒、母子保健、精神障害、認知症、がん検診受診率、健康づくりなど地域の健康課題として保健所が取り組むことは多岐にわたりますが、そのすべてにおいて、小豆保健所の職員、小豆郡医師会の先生方、小豆島中央病院さん、2町の職員さん、そして何より管内に住むすべての住民の皆さんに教えてもらい、助けてもらいながら、最初は本当に肩書だけの素人のような私を保健所長として育てていただきました。

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2022年3月末、島での最後の仕事を終えて去る時に乗ったフェリーの写真です。4月から管内人口約10万人(精神の通報は高松市も含む約50万人)の香川県東讃保健所に異動となり、小豆保健所の時と比べると住民さんとの距離がやや遠くなってしまったように感じます。

保健所が人口3万人あたりに1つくらいあると、よりきめ細かな保健活動、感染症対策ができるのだろうなぁと小豆保健所を懐かしく思うこともありますが、たぶんそれはまだ私がこの規模での地域保健の築き方を攫みきれていないだけなのでしょう。小豆から育てていただいた芽をすくすくと成長させて、いつか大きな木になるという意思を持って、これからも頑張っていきたいと思います。

(香川県東讃保健所長 横山勝教)

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2022年03月15日

【公衆衛生医師の日常】おにぎりに込められた思い(山形県最上保健所 鈴木恵美子)

これおにぎりうちの職員食堂のお父さんお母さん(社長ご夫妻)が炊き出しして握ってくれたもの。
昨日からはじまりました。

昨夜は気付いた時すでに0時半で売り切れ🥲
今日は買えました。
いつもは昼のお米を残して握ってるので、おにぎり自体はあるのですが、気持ちが嬉しいです(o^_^o)

(山形県最上保健所 鈴木 恵美子)


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